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豪英FTAおよびNZ英FTAが5月31日に発効 (その2:豪州およびニュージーランド側の反応)

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 豪州連邦政府のアンソニー・アルバニージー首相は2023年5月5日、英国との自由貿易協定(FTA)が同月31日に発効することを発表した。同協定は20年6月から交渉が開始され、21年6月に合意(注1)、同年12月に署名されていた。
 また隣国のニュージーランド(NZ)のクリス・ヒプキンス首相は同じく5月5日、英国とのFTAが豪州と同じく5月31日に発効することを発表した。同協定は豪州と同時期の20年6月から交渉が開始され、21年10月に合意(注2)、22年2月に署名されていた。
 両首相とも声明の中で、本協定における市場アクセスの成果は、両国がこれまで締結した協定の中で最も優れたものであると評している。特にNZのダミアン・オコナー貿易大臣は、本協定により、NZの年間GDPは最大10億NZドル(845億円:1NZドル=84.46円(注3))増加すると予想され、英国向け輸出を50%以上増加させることができるとしている。

 本稿では、豪州、NZ両国のFTAにおける主な農畜産物の発効後の取り扱いや、農畜産業界の反応について紹介する。

(注1)海外情報「豪英FTAが合意(その2:豪州側の反応)」を参照されたい。
(注2)
海外情報「ニュージーランドと英国、FTAで大筋合意(その2:ニュージーランド側の措置と反応)」を参照されたい。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の23年4月末TTS相場。

1.豪英FTAにおける主な農畜産物の取り扱い

 英国産農畜産物の豪州への輸出について、チーズ以外は発効後即時にすべての関税が撤廃される(チーズは発効後6年目に撤廃)。一方、豪州産農畜産物の英国への輸出については、以下の通り(注4)(表1)。

(注4)海外情報「英豪FTAおよび英NZ FTAが5月31日に発効 (その1:英国・欧州側の反応)」も参照されたい。
表1 豪州での取り扱い

2.NZ英FTAにおける主な農畜産物の取り扱い

 英国産農畜産品のNZへの輸出については、発効後即時に全ての関税が撤廃される。一方、NZ産農畜産品の英国への輸出については、以下の通り(注4)(表2)。
表2 NZでの取り扱い

3.農畜産業界の反応

 今回の英国とのFTA発効について、両国の主な農畜産団体の受け止めは以下の通りである。

(1)豪州

ア.キャトル・オーストラリア(牧草肥育牛関係団体)
 本協定発効を歓迎するが、現在、豪州産牛肉の英国への市場アクセスは、欧州連合牛認定制度(EUCAS:European Union Cattle Accreditation Scheme)により、ホルモン成長促進剤投与が一度もない牛由来の肉に限定する必要がある。英国には、豪州が厳格なトレーサビリティシステムにより流通管理を行っていることを訴えつつ、本制度の適用変更を期待する。

イ.デイリー・オーストラリア(酪農関係団体)(独自取材による聞き取り)
協定の内容は、豪州酪農業界にとって非常に前向きなものとなっているが、豪州は現在、新たな市場に輸出できるだけの余剰乳製品を持ち合わせていない。また、英国の輸入要件はEUから組み込まれたものであり、非常に厳格なものとなっている。さらに英国は、他の輸出市場よりも遠方にあるため、運送費がかさむ上、EUのチーズが英国では既に無関税で輸入できるため、価格競争面で豪州産が劣るなど、輸出拡大にはいくつかの課題がある。

ウ. 豪州砂糖製造業者協議会(砂糖関係団体)
 8年間で英国の砂糖関税が撤廃されるのは、豪州砂糖産業にとって前向きな内容である。本協定の発効は、豪州から英国市場に高品質な粗糖を輸出することができ、国内の生産者や製糖部門を支援する選択肢を提供することになる。(注5)

(注5)本協定合意時(21年6月)に同協議会が公表した声明を基に記載。

(2)NZ

ア.ビーフ&ラムNZおよびNZ食肉産業協会(いずれも食肉関係団体)
 英国への無関税での牛肉輸出に期待している。本協定により、NZ牛肉業界の価値を高められる。NZの牧草肥育牛肉は、英国の牛肉供給を補完するものである。一方で、豪州はFTAを通じより大きな市場アクセスを獲得していることから、同国との競争は激しく、我々は提供された市場アクセスを活用するために努力する必要がある。

イ.ホートNZ(園芸関係団体)
 本協定は、新型コロナウイルス感染症や生産コストの高騰、天候災害により疲弊したNZの園芸業界にとって、将来への希望となる。特にNZの地域経済にとって重要な役割を担っているたまねぎ産業では、発効後即時に関税が撤廃される。我々は政府などと連携し、2035年までに園芸作物の輸出額を120億NZドル(1兆135億円)まで増加させる目標を立てているが(注6)、本目標には関税や非関税障壁の撤廃、新市場の開拓などが含まれており、本協定の発効は目標達成に向けた重要な一歩となる。

(注6)海外情報「2035年までの園芸作物戦略目標を公表(NZ)」を参照されたい。
【調査情報部 令和5年5月24日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530