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英豪FTAおよび英NZ FTAが5月31日に発効 (その1:英国・欧州側の反応)

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 英国政府は5月4日、豪州およびニュージーランド(NZ)との自由貿易協定(FTA)が、いずれも5月31日に発効すると発表した(注1)
 英国政府は、豪州およびNZとのFTAはBrexit後に交渉が開始され締結に至った初めてのものであり、経済活動の8割を占めるサービス産業主体の英国経済に合致した貿易協定であると評価している。この協定により、英国政府は豪州との貿易額が53%、NZとの貿易額が59%それぞれ増加するとしている。また、影響を受けるとみられる牛肉などの農産品に対しては、関税の撤廃まで移行期間の設定がされた。
 英国スナク首相は、両国と協定が締結され、高度な技術を持つ人材の雇用の増加、経済成長や技術革新が促進されることを歓迎するとした。
 同国ベイデノック国際貿易大臣も、英国が独立した貿易国としての立場を生かして、数週間前に発表した環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)への参加も含め、太平洋の経済圏との貿易協定を実行に移すことで、新たなビジネス機会が生み出され、賃金の引き上げと経済成長が促進されるとの見通しを示した。
(注1)海外情報「英豪FTAが合意(その1:英国側の反応)」、「英国政府、英豪FTAの合意内容の概要を発表」、「英国とニュージーランド、FTAで大筋合意(その1:英国側の措置と反応)」も参照されたい。

両FTAにおける主な畜産物の取り扱い

 同日に発効する両国のFTAは、関税の撤廃・削減のスケジュールおよび無税枠の数量が異なっている(注2)(表1、表2)。
 乳製品については、5年間ですべてのHSコードの関税が撤廃されることになるが、輸出量が多いNZの脱脂粉乳(SMP)、全粉乳(WMP)、ホエイ、乳糖の関税は3年で撤廃される。
 また、英国にとって競争力に不安のある牛肉については、両国とも関税撤廃まで10年の移行期間と関税割当(TRQ、枠内無税)が設定され、2033年以降は特別セーフガード措置が設定されている。ただし、関税割当数量は、輸出量が多い豪州がNZよりも多く割り当てられている。
(注2)海外情報「豪英およびNZ英FTAが5月31日に発効(その2:豪州およびニュージーランド側の反応)」も参照されたい。
表1

関係者による反応

 全英農業者組合(NFU)は同日声明を発表し、同協定の発効による英国の生産者への影響を継続して監視する必要があることを強調している。加えて、英国の食品安全基準を維持するとした英国政府の約束が履行されているか確認が必要としている。
 また、欧州乳製品輸出入・販売業者連合(EUCOLAIT)に聞き取りを行ったところ、経済情勢などに左右されるものではあるが、粉乳、バター、差別化されていないチーズなどは、輸送費込みで欧州産より価格が低い時には一時的な輸入が行われる可能性はあるものの、乳製品については短期的に、両国から英国への輸出が急増することはないのではないかという見解であった。
【調査情報部 令和5年5月24日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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