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フォンテラ社、22/23年度乳価の引き下げと23/24年度当初乳価を発表(NZ)

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 ニュージーランド(NZ)乳業最大手のフォンテラ社は5月25日、2022/23年度(6月〜翌5月)の生産者支払乳価を生乳の固形分(注1)1キログラム当たり平均0.1NZドル(9円:1NZドル=86.46円(注2))引き下げ、同8.2NZドル(709円)にすると発表した(図)。同年度の当初乳価について同社は、過去最高水準となる同9.0NZドル(778円)に設定していたが、全粉乳や脱脂粉乳などの乳価参照製品(注3)の国際相場低下を受けた期中見直しを行っており、今回で5回目の引き下げとなった。
 また、同社は同日、23/24年度の当初乳価を同8.0NZドル(692円)とすると発表した。
22/23年度乳価の引き下げについて、同社のハレル最高経営責任者は、「最近の乳製品国際相場は乳価を維持できる程のレベルには回復していない」として、生産者などへの理解を求めた。また、23/24年度当初乳価については「中国経済の回復時期や程度はいまだ不透明であり、同国の全粉乳在庫が通常レベルを上回っていることを反映したもの」とし、主要輸出先である中国市場の需要減退が響いた形となった。

(注1) 乳脂肪分および乳たんぱく質。
(注2) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年5月末TTS相場。
(注3) 乳価参照製品(Reference products):全粉乳、脱脂粉乳、バター、無水乳脂肪の4品目。主に原料乳製品として扱われることが多く、国際市場における流通量が多いことから、同社の乳価の計算に用いられている。これら以外の品目(チーズ等)は、非参照製品(Non-referenced products)と総称されている。
図 フォンテラ社の生産者支払乳価の推移
 一方で、チーズやカゼインなどの非乳価参照製品は高い利益率を維持しており、第3四半期までの同社の業績に大きく寄与している(表)。このため、1株当たりの純利益は現行の0.55〜0.75NZドル(48〜65円)から0.65〜0.8NZドル(56〜69円)へと上方修正し、22/23年度の配当金(注4)は好調との見込みを示した。

(注4)通常、フォンテラ社へ生乳を出荷する生産者は、生乳出荷実績に応じてフォンテラ社の株式を取得する(生乳の固形分3キログラムに対して最低1株)。このため、最終的に生産者に支払われる金額は、生産者支払乳価と配当金を合わせた金額となる。
表 フォンテラ社 第3四半期までの業績の推移
 また同社は、22/23年度4月までの累計生乳集乳量について、前年並みの140万5000トン(前年同期比0.2%減)と発表した。乳牛飼養頭数の減少(注5)や北島を中心とする悪天候の影響を受けて年度前半の生乳生産は振るわなかったが、後半からは断続的な降雨と気温の上昇により牧草の生育が順調に進んだことで、生乳生産は好調に推移したとしている。

(注5)海外情報「2022年6月末の飼養頭数、肉用牛および乳用牛ともに減少(NZ)」を参照されたい。
 
【工藤 理帆 令和5年6月7日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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