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2023/24年度当初乳価引き下げで酪農家が反発(豪州)

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 豪州の乳業各社や酪農協は、酪農業界における行動規範(Dairy code of conduct)(注1)に基づき、2023/24年度(7月〜翌6月、以下「新年度」という)の当初乳価を発表した。
 豪州の乳価情報などを一元的に提供するミルクバリューポータル(注2)によると、年間200〜250万リットルの生乳を産出する平均的規模の酪農家を対象とした新年度乳価は、乳業各社ともに前年度からおおむね1割程度低い提示額となった。前年度の乳価を見ると、主要酪農地域であるビクトリア州ギプスランド地域では、生乳の固形分(注3)1キログラム当たり9.45豪ドル(880円:1豪ドル=93.07円(注4))となっており、酪農家や生産者団体からは反発の声が上がっている。
 
(注1)酪農業界における行動規範に基づき、乳業各社らは毎年6月1日までに、次年度の生産者支払乳価など取引条件を公表することが義務付けられている。
(注2)乳製品の加工業者、販売業者などを代表する豪州の政府機関である豪州乳製品連合会(ADPF)が運営するポータルサイト。乳価の透明性を高めることを目的に、地域や成分などに応じた平均的な乳価を試算できるツールなどが掲載されている。
(注3)乳脂肪分および乳たんぱく質。
(注4)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の23年5月末TTS相場。
表 23当初乳価
 豪州最大手のサプート・デイリー・オーストラリア社(表中の「豪州サプート社」)は、新年度当初乳価を同8.9〜9豪ドル(828〜838円)と提示した。また、ニュージーランドの乳業最大手フォンテラ社(注5)の豪州法人である豪州フォンテラ社は、同8.65豪ドル(805円)と提示している。現地報道によると、これらの価格は、22/23年度乳価と比較して約10%の引き下げに相当するとしている。豪州フォンテラ社は新年度当初乳価に関し、過去1年間で17%も下落した乳製品国際価格よりも高く設定されているとコメントしている。これに対し、酪農家により構成され、同社と生乳の供給条件について交渉を行う豪州フォンテラサプライヤー協議会(FASC)は、今回発表された当初乳価が見直されない場合、タスマニア州で生乳の固形分を年間30万キログラム生産する平均的規模の酪農家では、年間約27万豪ドル(2513万円)の収入減になるとしている。また、ビクトリア州酪農家連合は、昨今の酪農家の生産コストが上昇している中で、これほどまでに低く当初乳価が提示されたことに失望したとしている。
 このほか、豪州資本でチーズを主に生産するベガ社は同8.8豪ドル(819円)、中国大手の蒙牛乳業傘下のバラ社は同8.5〜9豪ドル(791〜838円)、フランス資本で世界最大の乳業であるラクタリス社の豪州法人ラクタリス・オーストラリア社(表中の「豪州ラクタリス社」)は同8.67豪ドル(807円)などとなっている。
 現地報道では、昨今の生産コスト上昇を考慮すれば、同10豪ドル(931円)近くまで引き上げることが妥当であり、適切な乳価設定は既存酪農家の離農回避につながるだけでなく、新規参入を促すインセンティブになるとする酪農家のコメントを紹介している。

(注5)ニュージーランドのフォンテラ社の当初乳価については、海外情報「フォンテラ社、22/23年度乳価の引き下げと23/24年度当初乳価を発表(NZ)」を参照されたい。
 酪農業界における行動規範に基づき、今後、酪農家は新年度乳価の検証とともに、今期の収入を試算することとなる。また、乳業各社も7月1日の新年度開始までの間、生乳確保に向けた酪農家との契約に向け、自社の財務状況に照らし合わせながら他社提示額との比較検討が行われることとなり、今後の乳価の動向が注目される。

補足

 通常、乳価は、乳質や出荷量などに応じて、出荷月ごとの単価が設定されるが、ここでは全体像を示すため、主要乳業各社の発表や現地報道をもとに、23/24年度当初の生乳の固形分1キログラム当たりの平均的な単価水準を示した。
【調査情報部 令和5年6月15日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530