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米国農務省、世界の砂糖市場動向および需給見通しを公表

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最終更新日:2023年6月16日

 米国農務省(USDA)は2023年5月25日、世界と米国の砂糖市場と貿易に関する報告書を公表した。本報告書では、砂糖の主要生産国であり、昨年洪水により国土全域に甚大な被害を受けたパキスタンの砂糖需給見通しについても解説されており、併せて紹介する。

2023/24年度の砂糖需給見通し

 2023/24年度の世界の砂糖生産量は、ブラジルとインドの増産がロシアの減産を十分に補うことから、1億8788万トン(前年度比6.0%増)とかなりの程度増加すると見込まれている。生産量世界第1位のブラジルでは天候に恵まれ、作付面積の増加が予測されることから、4201万トン(同10.4%増)とかなり大きく増加し、過去最高水準に達すると見込まれている。また、同世界第2位のインドも単収の増加などから、主産地で過去最高の生産量を記録した21/22年度水準までの回復が期待され、3600万トン(同12.5%増)とかなり大きく増加すると見込まれている。  輸入量は、EUやインドネシアで砂糖の増産見込みにより減少するものの、中国の輸入増から5901万トン(同2.6%増)とわずかに増加すると見込まれている。  消費量は、インドやパキスタンなどの市場の成長により、1億8080万トン(同2.4%増)とわずかに増加し、過去最高を更新すると見込まれている。消費量世界第1位のインドでは、加工食品企業やバルクバイヤー(一括購入者)などの需要が増加し、3100万トン(同5.1%増)とやや増加すると見込まれている。  輸出量は、パキスタンなどからの輸出が減少するものの、砂糖の三大輸出国であるブラジル、タイ、インドの増加により、7210万トン(同9.1%増)とかなりの程度増加すると見込まれている。  この結果、期末在庫は、3346万トン(同15.2%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。
表 主要国の砂糖の需給見通し

パキスタンの砂糖生産は洪水から回復

 パキスタンの2023/24年のサトウキビ生産量は、洪水で被害を受けた前年度から収穫面積が回復したことで、前年度比3%増の8350万トンと見込まれている。また、砂糖生産量も、同様の理由から711万トン(前年度比3.6%増)と見込まれている。
 消費量は、人口増と増産に支えられ、630万トン(同2.4%増)とわずかに増加すると見込まれている。
 輸出量は、生産量が増加するにもかかわらず、政府が輸出の抑制を図っていることから、80万トン(同20.0%減)と大幅に減少すると見込まれている。同国政府は、国内価格の上昇を懸念して23/24年度は輸出抑制の方針を掲げているが、今後、市場動向に応じ、2週間ごとに輸出制限を見直すとされている。
 この結果、期末在庫は352万トン(同0.3%減)と横ばいで推移すると見込まれている。

パキスタンのサトウキビ生産

 パキスタンのサトウキビ生産は主に3つの州で栽培されており、生産量(15/16〜17/18年度の平均)順にパンジャーブ州(全体の68%)、シンド州(24%)、カイバル・パクトゥンクワ(KPK)州(8%)である(図)。
図 パキスタンのサトウキビ生産地
 同国のサトウキビ栽培は、2月から3月にかけての春植えと9月から10月にかけての秋植えの二回に分けられる。パンジャーブ州とシンド州では春秋の二期作であるが、北部に位置するKPK州では春植えが主体となる。同国の単収は、高収量品種の不足や水不足、肥料の偏りなどから、1へクタール当たり70トン程度である。サトウキビは他の作物と比較して天候災害からの回復力が高く、また国内で高く取引される作物であることから、農家は転作よりもサトウキビ栽培の維持を選択する傾向にある。
【峯岸 啓之 令和5年6月16日発】
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