生産量は、繁殖母豚頭数を中心とした豚肉供給量の管理が強化され、供給量の変動が小さくなることで、安定して増加傾向で推移するとみられる。しかしながら、食生活水準の向上や健康志向により栄養バランスが見直されることで、食の多様化が進み、これまで食肉の中心であった豚肉生産の増加率は次第に縮小していくとみられている。これにより、2027年の豚肉生産量は5583万トン(基準期間比<20〜22年の平均値との増減率>12.0%増)、32年には5602万トン(同12.4%増)と見込まれている。重要な産業である養豚業に関する学術研究は引き続き推し進められる中で、養豚の形態は規模拡大や企業化が進み、環境に配慮した生産形式へと発展し、養豚場の設備は単なる機械化ではなく、人工知能などの先端技術が導入され、高度な情報化や自動化が進むと予測されている。
消費量は、今後10年のうち、短期では前述のとおり複数の要因により増加が見込まれるものの、長期的には高齢化による1人当たりの年間平均消費量増加率の縮小や総人口の減少に伴い、次第に減少に向かうとみられている。この結果、27年の消費量は5755万トン(同8.5%増)、1人当たりの年間平均消費量は40.93キログラム、32年の消費量は5719万トン(同7.8%増)、1人当たりの年間平均消費量は41.09キログラムと見込まれている
(注2)。特に30年以降は、60歳以上の人口が全体の25%以上となることが見込まれており、消費量は大きく減少に向かうと予測されている。
輸入量は、前述のとおり、短期では増加するものの、生産量が増加する一方で消費量は減少するため、家畜疾病の大規模なまん延などによる減産が生じない限り、着実に減少に向かうとみられる。しかしながら、輸入骨付き豚肉には一定の需要が定着しており、豚肉輸入の底支えとなっている。27年の輸入量は182万トン(同44.6%減)、32年は130万トン(同60.4%減)と見込まれている。
価格面では、豚肉供給の安定化などにより、長期的には価格の変動幅は縮小し、安定化に向かうと予測される。
今後の見通しについて、家畜伝染病の影響、飼料価格の変動、豚肉消費の増減などが養豚産業に大きな影響を与える可能性があるとしている。
2007年以降、アフリカ豚熱や豚繁殖・呼吸障害症候群などの家畜伝染病が猛威を振った。現在は大規模な流行は顕在化せず、一見感染拡大が抑えられているようにもみられるが、実態として散発的に種々の病気が発生している状況と考えられる。
また、飼料企業は経営努力によりトウモロコシや大豆などの飼料原料の配合割合を調整するなど、生産コストの削減に努めている。今後のさらなる生産性向上や飼料穀物備蓄の状況によっては、養豚業の生産コストにも影響を及ぼす可能性があると見込まれる。
さらには、今後の経済活動の回復に伴う潜在的な豚肉需要の喚起が見込まれるが、その時期や程度は所得水準の向上の動向などに影響を受ける。一方、長期的には総人口の減少や健康意識の高まりによる動物性タンパク質から植物性タンパク質への消費の変化などといった食の多様化が、豚肉消費に負の影響を与える可能性がある。
これらの要因などにより、今後の見通しに変更が生じる可能性が懸念されるとしている。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年5月末TTS相場。
(注2)昨年の報告では、22年対比で1人当たりの年間平均消費量の減少を織り込みつつも、10年後は同年比で消費量は増加するとしている。一方で今回の報告では、食の多様化が進むとしつつも、23年対比で1人当たりの年間平均消費量の増加を前提としながら、消費量では同年比で減少が見込まれている。
・中国農業展望報告(2022−2031)を発表(豚肉編)(中国)