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中国農業展望報告(2023−2032)を発表(豚肉編)(中国)

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 中国農業農村部は2023年4月20日および21日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2023−2032)」を発表した。同大会は14年から毎年開催されており、今回は22年の総括と32年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。本稿では、この中の豚肉について紹介する。

1.2022年の豚肉需給動向

 2022年の生産量は、上半期を中心に供給過多な状態であったが、下半期に向けて供給を絞る傾向にあったことから、前年比4.6%増の5541万トンと緩やかな成長となった。繁殖母豚頭数は21年6月から10カ月連続で減少した後、5月に増加に転じ、22年末には前年末比1.4%増の4390万頭となり、年間のと畜頭数は前年比4.3%増の7億頭となった。
 輸入量は、同52.6%減の176万トンと半減した。同年は上半期を中心に豚肉生産能力の向上と豚肉価格低迷から輸入量は減少傾向であったが、下半期には豚肉価格の回復から輸入豚肉に割安感がみられたことで徐々に増加した。主な輸入先はスペイン、ブラジル、デンマーク、米国、オランダ、カナダなどで、全輸入量に占める割合はスペインが27.0%、ブラジルが23.7%と上位2カ国で過半数を占めた。
 消費量は、同0.8%増の5705万トンとなった。第1四半期は元旦や春節などの祝日需要がけん引したものの、第2四半期は一部地域で新型コロナウイルス感染症(COVID−19)が深刻化したため、飲食業などが影響を受け、消費量は大きく減少した。下半期に入ると国内経済の回復から豚肉消費も上向きに転じたが、11月以降は(1)COVID−19の再度深刻化、(2)同国北部や南西部の天候不順による生体豚および豚肉輸送への悪影響、(3)春節に向けた加工肉製造が始まるのが遅く製造量が少なかったこと−などの要因により豚肉消費は好調とは言い難い状況であった。
 価格面では、22年の豚肉平均価格は同8.7%安の1キログラム当たり30.72元(615円:1元=20.01円(注1))、となった。1月から4月にかけては、安定的な供給が継続する中で豚肉価格は下落傾向にあったものの、5月から11月にかけては豚肉生産が頭打ちとなった一方、国慶節関連の大型連休(2022年10月1〜7日)などの祝日需要などの季節的な需要もあって、価格は上昇傾向となった。12月に入るとCOVID−19が再度深刻化する中での短期的かつ急激な消費の縮小と、豚肉価格の下落を懸念した生産者からの出荷が急増したことで豚肉価格は急落した。

2.2023年の豚肉需給動向予測

 2023年も引き続き安定的な豚肉生産が行われるとみられている。22年末の総飼養頭数および繁殖母豚頭数は高水準にあることから、23年のと畜頭数は前年を上回り、豚肉生産量も前年比0.5%増の5570万トンと前年をわずかに上回るとみられる。
 輸入量は、国際的なサプライチェーン、外食産業、加工製品需要の回復により、前年比14.3%増の約200万トンとみられる。
 消費量は、安定した豚肉供給、COVID−19の影響緩和、所得水準の向上などの複数の要因により、前年比1.0%増の5765万トンとみられている。また、1人当たりの年間消費量は同1.1%増の40.86キログラムとみられる。
 また価格面では、前述の通り、22年末の総飼養頭数および繁殖母豚頭数は高水準にあり、安定した供給が見込まれる中で、外食産業や加工製品需要などの回復により、豚肉価格は前年をやや上回って推移するとみられる。

3.2032年までの豚肉需給動向予測

 生産量は、繁殖母豚頭数を中心とした豚肉供給量の管理が強化され、供給量の変動が小さくなることで、安定して増加傾向で推移するとみられる。しかしながら、食生活水準の向上や健康志向により栄養バランスが見直されることで、食の多様化が進み、これまで食肉の中心であった豚肉生産の増加率は次第に縮小していくとみられている。これにより、2027年の豚肉生産量は5583万トン(基準期間比<20〜22年の平均値との増減率>12.0%増)、32年には5602万トン(同12.4%増)と見込まれている。重要な産業である養豚業に関する学術研究は引き続き推し進められる中で、養豚の形態は規模拡大や企業化が進み、環境に配慮した生産形式へと発展し、養豚場の設備は単なる機械化ではなく、人工知能などの先端技術が導入され、高度な情報化や自動化が進むと予測されている。
 消費量は、今後10年のうち、短期では前述のとおり複数の要因により増加が見込まれるものの、長期的には高齢化による1人当たりの年間平均消費量増加率の縮小や総人口の減少に伴い、次第に減少に向かうとみられている。この結果、27年の消費量は5755万トン(同8.5%増)、1人当たりの年間平均消費量は40.93キログラム、32年の消費量は5719万トン(同7.8%増)、1人当たりの年間平均消費量は41.09キログラムと見込まれている(注2)。特に30年以降は、60歳以上の人口が全体の25%以上となることが見込まれており、消費量は大きく減少に向かうと予測されている。
 輸入量は、前述のとおり、短期では増加するものの、生産量が増加する一方で消費量は減少するため、家畜疾病の大規模なまん延などによる減産が生じない限り、着実に減少に向かうとみられる。しかしながら、輸入骨付き豚肉には一定の需要が定着しており、豚肉輸入の底支えとなっている。27年の輸入量は182万トン(同44.6%減)、32年は130万トン(同60.4%減)と見込まれている。
 価格面では、豚肉供給の安定化などにより、長期的には価格の変動幅は縮小し、安定化に向かうと予測される。
 
 今後の見通しについて、家畜伝染病の影響、飼料価格の変動、豚肉消費の増減などが養豚産業に大きな影響を与える可能性があるとしている。
 2007年以降、アフリカ豚熱や豚繁殖・呼吸障害症候群などの家畜伝染病が猛威を振った。現在は大規模な流行は顕在化せず、一見感染拡大が抑えられているようにもみられるが、実態として散発的に種々の病気が発生している状況と考えられる。
 また、飼料企業は経営努力によりトウモロコシや大豆などの飼料原料の配合割合を調整するなど、生産コストの削減に努めている。今後のさらなる生産性向上や飼料穀物備蓄の状況によっては、養豚業の生産コストにも影響を及ぼす可能性があると見込まれる。
 さらには、今後の経済活動の回復に伴う潜在的な豚肉需要の喚起が見込まれるが、その時期や程度は所得水準の向上の動向などに影響を受ける。一方、長期的には総人口の減少や健康意識の高まりによる動物性タンパク質から植物性タンパク質への消費の変化などといった食の多様化が、豚肉消費に負の影響を与える可能性がある。
 これらの要因などにより、今後の見通しに変更が生じる可能性が懸念されるとしている。

(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年5月末TTS相場。
(注2)昨年の報告では、22年対比で1人当たりの年間平均消費量の減少を織り込みつつも、10年後は同年比で消費量は増加するとしている。一方で今回の報告では、食の多様化が進むとしつつも、23年対比で1人当たりの年間平均消費量の増加を前提としながら、消費量では同年比で減少が見込まれている。
中国農業展望報告(2022−2031)を発表(豚肉編)(中国)

 
表 豚肉の需給動向および見通し
【海老沼一出 令和5年6月23日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4389