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バイオセキュリティを中心とした2023/24年度予算案などを発表(豪州)

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 豪州連邦政府は2023年5月、2023/24年度(23年7月〜24年6月)の予算案を発表した。労働党政権として予算案を発表するのは、昨年10月(注1)に続き、今回が2回目となる。

(注1)海外情報「新政権がバイオセキュリティ強化などの予算案を公表(豪州)」を参照されたい。
 農林水産関連では、今後4年間で約15億豪ドル(1396億円:1豪ドル=93.07円(注2))の予算が計上され、このうちバイオセキュリティ関連予算として、約3分の2以上となる10億3000万豪ドル(959億円)が割り当てられた。現政権の選挙公約であるバイオセキュリティシステム強化の実現に向け、予算の大きな柱となっている(表)。これにより、水際対策などに関する持続可能なバイオセキュリティ政策の運営や、輸入貨物におけるバイオセキュリティ監視の有用性・効率性を向上させる最新のデジタルシステムへの投資などに取り組むとしている。

(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年5月末TTS相場。
 このほかの主な予算として、(1)気候変動に対応した持続可能な農業に関する予算として、温室効果ガス排出量を削減し、気候変動に配慮した農業手法の採用や、生物多様性を保護する資源管理手法の適用などの取り組みに3億207万豪ドル(281億1365万円)、(2)豪州農業資源科学経済局(ABARES)による持続可能性などに関する情報収集・分析の強化などの取り組みに3825万豪ドル(33億5993万円)、(3)豪州の農業土壌の健全性を向上させるための国家土壌行動計画の策定に2000万豪ドル(18億6140万円)、(4)生体羊の海上輸送の段階的廃止に向けた関連措置に560万豪ドル(5億2119万円)、(5)畜産物の市場アクセス拡大に向けた豪州動物福祉戦略の策定に500万豪ドル(4億6526万円)−などが措置されている。
 また、豪州農業界の課題の一つである労働力不足については、太平洋諸国からの季節労働者が、最長4年間、同国内で働くことができる「太平洋豪州労働力移動計画(PALM:Pacific Australia Labour Mobility)」の拡充を図るため、太平洋地域の労働者における福利厚生などの支援に3億7080万豪ドル(345億1036万円)が措置されている。現地報道によると、豪州ではすべての産業でPALMにより約3万8000人の雇用を確保しているが、現在の農業の労働力不足人員は、数万人単位であると推定している。
表 予算パッケージ
 一方連邦政府では、バイオセキュリティは農業界で共有すべき責任事項であるとし、継続的なバイオセキュリティ政策に向けた予算確保の観点から、24年7月以降、農家への課税を20/21年度比で10%引き上げ、1年間で4750万豪ドル(44億2083万円)を新たに徴収することを発表している(図)。具体的には牧草肥育牛生産者は1頭当たり50豪セント(47円)、鶏卵生産者は雛1羽当たり3.25豪セント(3円)を追加の税金として支払うことになるなどとしている。これに対し、農業団体である全国農業者連盟(NFF)からは、追加の農業者負担は看過できないとする声明が発表されるなど、反対の声が上がっている。
 連邦政府のマレー・ワット農相は、24/25年度の実施を予定している農家からの課税徴収額は今後のバイオセキュリティ対策資金に充てられる歳入全体のわずか6%程度であり、農家もバイオセキュリティシステムの受益者であることを考慮すれば、負担は当然としている。その一方で、今後1年間をかけ、新たな課税について農家との協議などを継続するとしている。
また農畜産物輸入業者は、同歳入全体の45%を占める3億6360万豪ドル(338億4025万円)を負担するほか、1000豪ドル(9万3070円)以下の輸入物品に対する新たな税金が導入される予定とされている。
図 負担割合
【調査情報部 令和5年6月27日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際情報グループ)
Tel:03-3583-9530