家畜疾病対策などを盛り込んだ2023/24年度予算案を発表(NZ)
ニュージーランド(NZ)政府は5月、2023/24年度(23年7月〜24年6月)の予算案を発表した。このうち農業関連では、昨年9月に同国内のフィードロットでの感染牛が確認されたマイコプラズマ・ボビス(Mycoplasma Bovis)
(注1、2)根絶のための予算や、昨年、同国北島で発生した気象災害からの復興関連予算などが措置されている。
主な農業関係の予算は以下の通り。なお各予算額は、22/23年度予算執行確定分を含む2を除き、23/24年度から26/27年度までの今後4年間の総額となる(1NZドル=86.46円
(注3))。
(注1)牛に乳房炎や肺炎、関節炎などを引き起こす。感染力が強く治療は難しいため、感染牛の早期発見と淘汰によるまん延防止が主な対策となる。
(注2)海外情報「マイコプラズマ・ボビス感染のフィードロット、牛を全頭殺処分(NZ)」を参照されたい。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の23年5月末TTS相場。
1.マイコプラズマ・ボビス根絶対策
(7779万NZドル:67億2564万円)
同疾病に対する根絶活動の継続、発生農場に対する補償金の支払いのほか、長期的な監視プログラムである国家有害生物管理計画(注4)への移行を支援する(同国ではこれまで280農場で同疾病の発生が報告され、2023年6月22日現在、うち1農場のみが検疫管理下農場となっている)。
(注4)1993年に制定されたバイオセキュリティ法(Biosecurity Act 1993)に基づき、2022年8月2日に発効したNZ全土の病原菌リスクを管理するための取り組みに関する計画。
2.北島の気象災害に関する農業復興支援
(3540万NZドル:30億6068万円)(注5)
昨年、北島に大きな被害をもたらしたサイクロン「ガブリエル」や、オークランド地域で発生した洪水をはじめとした気象災害によって、影響を受けた農業地域の企業・コミュニティの復興を支援する。
(注5)2022/23年度の予算執行確定分を含む。
3.園芸分野のアグリテックの推進
(2991万NZドル:25億8559万円)
アグリテック産業変革計画(Agritech Industry Transformation Plan)(注6)の一環として、園芸分野のアグリテック産業を海外市場に参入させるための組織である園芸テクノロジー・カタリストにおける人材開発、プロジェクトサポートなどの取り組みを支援する。
(注6)同国のアグリテック産業の成長に関する計画で、2020年7月に経済開発相と農業相の連名で公表されたもの。
4.農業における温室効果ガス排出削減対策
(2740万NZドル:23億6900万円)
政府が推奨する農業における温室効果ガス排出量に応じた課税システムの開発を継続する。また、政府に気候変動対策への助言を行う独立機関である気候変動委員会が今後決定する課税率に関する客観的データの提供を支援する。
5. 植物防疫に関するインフラ整備
(434万NZドル:3億7541万円)
バイオセキュリティ能力を強化した新たな植物衛生環境研究所の建設と、継続的な運営に向けた取り組みを支援する(2031/32年度までに合計3769万NZドル(32億5868万円)を措置)。
本予算案に関し、業界団体であるNZ農民連合(Federated Farmers)は、酪農家をはじめとする農家が、肥料代、燃料代、金利、人件費の上昇のほか、インフレの影響も受けて利益の確保が困難になっている中、予算案にこれらのコストを下げる内容が含まれていないとして、非難している。
参考
【調査情報部 令和5年6月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530