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中国農業展望報告(2023−2032)を発表(野菜編)(中国)

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最終更新日:2023年6月29日

 中国農業農村部は2023年4月20日および21日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2023−2032)」を発表した。同大会は14年から毎年開催されており、今回は22年の総括と32年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。
 本稿では同報告のうち野菜について紹介する。

1. 2022年の野菜需給動向

 2022年の生産量は、作付面積が前年比1.6%増の3.3億ムー(2233万7000ヘクタール)となったことを受け、同2.0%増の7億9100万トンとなった。同年は主産地である雲南(うんなん)省や河南(かなん)省が7月の高温と干ばつに見舞われたことで、夏野菜の供給が一時的にひっ迫した。しかし、(1)21年産の秋野菜が高値で推移したことで、22年も秋野菜を中心に生者の増産意欲が高まったこと、(2)同年12月には政府によるゼロコロナ政策が緩和され、これまで発生していた地域間の物流の停滞が解消に向かい市場に活気が戻ったことなどから秋から冬にかけては十分な野菜の供給を確保することができた。
 輸出量は、同6.5%増の1183万トンとかなりの程度増加し、輸出額も同9.2%増の172億2000万米ドル(2兆4241億円:1米ドル=140.77円(注))とかなりの程度増加した。このうち主要な輸出品目であるにんにく(乾燥品および加工品を含む)は、輸出量が225万9400トン(同5.9%増)、輸出額が24億800万米ドル(3491億円、同7.8%減)となり、野菜輸出総額の14.4%を占めた。
 消費量は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、外食を中心とする業務用需要が減少する中で、調理・加工済み惣菜野菜などの中食や内食需要が増加したことなどから同0.2%増の5億8100万トンと前年並みとなった。
 また、価格面では、主要野菜28品目の全国平均価格が同0.6%安の1キログラム当たり4.92元(98円:1元=20.01円(注))と前年をわずかに下回ったものの、過去3年間の平均水準を6.4%上回った。年間の価格変動は、野菜の需要期となる春節や年末に上昇するなど基本的には例年の季節変動性に沿って推移したものの、第3四半期はCOVID-19の感染拡大による物流の停滞や南部の天候不良(干ばつ)の影響によりひっ迫し、例年を上回る高値となった。
 

2.2023年の野菜需給動向予測

 2023年の生産量は、前年比0.3%増の7億9300万トンと予測され、安定した生産が継続するとみられている。
 輸出量は、同0.7%増の1191万トンとわずかな増加が予測され、輸出先として、日本をはじめ、韓国、米国など主要輸出先への輸出が拡大するとされている。
 消費量は、引き続き順調な増加が見込まれることで、同1.2%増の5億8800万トンと予測されている。また、価格面では、農地、人件費、生産資材などの生産コストの上昇により、前年比5%以内の安定的な上昇が見込まれている。

3.2032年までの野菜需給動向予測

 今後10年間は、土地や水資源の制限から作付面積は3億ムー(2000万ヘクタール)で安定的に推移するとされている。一方、生産量は品種改良による単収の向上、機械化の進展などから2032年には7億9900万トン(基準期間比<20〜22年の平均値からの増減率>3.5%増)に達すると予測されている。今後、同国の野菜生産は人口が減少に向かう中で、労働集約型から技術集約型への転換が加速すると見込まれている。
 輸出量は、純輸出国として安定した状況が続き、32年には1409万トンになると予測されている。国内では高品質野菜の需要が高まり、野菜のブランド化が進む中、特に希少品種や高級野菜の輸出加工産業が発展し、貿易活動の活発化が見込まれている。野菜の主要輸出先は日本、韓国、米国、ASEAN、EUなどであり、輸出主要品目はにんにく、キノコ類、トマト、しょうが、唐辛子などが見込まれている。なお、取引量の増加率では輸出に比べて輸入の伸びが大きくなる可能性があるものの、その規模は輸出に比べて限られた状況が継続する。
 消費量は、eコマースやライブショッピングなどの新規流通形態の発展や生活水準の向上から今後10年間で増加し、32年には6億900万トンに達すると予測されている。同国では近年、主食の消費が減少する一方で、動物性食品(主に肉と牛乳)の消費が増加する傾向にあり、それに対応してビタミンと食物繊維を豊富に含む野菜の消費も増加傾向にある。また、1人当たりの所得増加とCOVID-19の流行を契機に、消費者の食への要求は「十分な量を食べる」から、「栄養価の高いものを食べる」、「健康的なものを食べる」へと嗜好変化が強まっているとされる。
 価格面では、農地、人件費、生産資材などの生産コストの上昇に伴い、着実に上昇する可能性が高いと見込まれている。また、消費者の健康的な食生活へのニーズが高まる中で高品質なブランド野菜の生産がますます増加していくとされ、それに伴い野菜単価の上昇も予測されている。さらに、洪水、干ばつ、寒波などの異常気象が野菜需給に悪影響を与えるリスクは依然として高く、野菜価格に影響を及ぼす可能性が示唆されている。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年5月末TTS相場。
表 野菜の需給動向および見通し
【工藤 理帆 令和5年6月29日発 】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:工藤 理帆)
Tel:03-3583-4394