畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2023年 > 中国農業展望報告(2023−2032)を発表(牛乳・乳製品編) (中国)

中国農業展望報告(2023−2032)を発表(牛乳・乳製品編) (中国)

印刷ページ
 中国農業農村部は2023年4月20日および21日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2023−2032)」を発表した。同大会は14年から毎年開催されており、今回は22年の総括と32年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。
 本稿では同報告のうち牛乳・乳製品について紹介する。

1.2022年の牛乳・乳製品需給動向

 2022年の生乳等生産量(注1)は4025万トン(前年比6.5%増)、そのうち生乳生産量は3932万トン(同6.8%増)となった(表)。増加の要因として、(1)ホルスタインを中心とした乳用牛の飼養頭数が増加したこと(2)大手乳業による自家牧場の建設増加により大規模化などが進展したこと(3)高泌乳牛の輸入や飼養技術の向上などにより乳用牛1頭当たりの平均年間乳量が9.2トンとなったこと―などが挙げられている。
 輸入量は、同17.3%減の1855万トン(生乳等換算数量、以下同じ)と大幅に減少した。この要因として、(1)乳製品国際価格の大幅な上昇(輸入額は同0.7%減と、輸入量の減少幅に比べて小さい)(2)国内の生乳生産量の増加(3)国内の乳製品消費需要の減退―が挙げられている。また、同年は輸入先が集中し、総輸入額に占める割合では、ニュージーランド(NZ)39.7%、EU33.0%、米国13.2%、豪州7.5%と、これら4カ国・地域で総輸入額の93.4%を占めている。
 消費量は、同1.7%減の5867万トンとなった。このうち9割近くを占める食用については、(1)国民の可処分所得の伸び率の低下(2)小売価格の上昇(3)新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の影響―などにより消費需要が減退し、1人当たり消費量は41.56キログラム(同1.7%減)とわずかに減少している(ただし、同消費量は前年に続いて過去2番目に多い水準であることも報告)。また、品目別では、食生活の変化などからチーズやバターなどの消費割合が増加している。このような中で生乳価格は、国内の生乳生産量が増加し続けているものの、需要が比較的軟調だったことから、高値ながらも下落傾向で推移している。

(注1)牛由来の生乳のほか、ヤギやヤクなど由来の乳を含む生産量。

2.2023年の牛乳・乳製品需給動向予測

 2023年の生乳等生産量は、大規模化や飼養管理の効率化が進展することなどから、前年比5.0%増の4227万トンと予測されている。
 輸入量は、国内の生産・在庫量の増加から粉乳の輸入量は減少するものの、国際価格が徐々に下落すると見込まれることから飲用乳とヨーグルトの輸入量が増加する結果、同1.7%増の1886万トンと見込まれている。
 消費量は、中国国家衛生健康委員会などが22年4月、1日の乳製品の推奨摂取量を「300グラム」から「300〜500グラム」へと引き上げたことなどを受けて、23年には同3.9%増の6098万トンと予測されている。また生乳価格は、国内の生乳生産量の増加や乳製品国際価格の下落傾向など引き下げ要因はあるものの、需要が緩やかに回復することなどから、現在の下落傾向は緩和すると予測されている。

3.2032年までの牛乳・乳製品需給動向予測

 生乳等生産量は、大規模化の進展や良質な飼料の給餌増加などから年平均4.0%増で推移し、2032年には5602万トン(基準期間比<20〜22年の平均値からの増減率>48.3%増)に達すると予測されている。また、大規模農家飼養頭数割合(注2)は85%に達し、乳用牛1頭当たりの平均年間乳量は10トンを超えると予測されている。
 生乳等生産量の伸びが消費の伸び率を上回ると見込まれることから、輸入量は引き続き増加するものの伸び率は鈍化し、32年には2320万トン(同17.0%増)と予測されている。輸入先については、NZなど現在の主要輸入先が引き続き安定した輸入先となるものの、ベラルーシ、ウルグアイ、アルゼンチンなどからの輸入量も増加傾向を維持しており、輸入先の多様化が進むと予測されている。
 消費量は、32年には7902万トン(同38.0%増)に達すると予測されている。その要因として、消費量のうち食用が占める割合は引き続き9割近くであるとした上で、(1)新生児数の減少が育児用調製粉乳や学乳の需要に影響を与えるものの、(2)COVID−19流行を経た健康意識の変化や、乳製品摂取に対する長年の啓蒙活動の結果から、1人当たり消費量が55.9キログラム(同37.7%)と「世界平均の半分程度」まで増加することが挙げられている。特に消費量の増加が見込まれる品目として、低温保存乳やチーズ、バターなどが挙げられている。また生乳価格は、(1)需要が増加するものの、土地利用などの制約があることで需給ギャップが発生すること(2)環境対策などの生産コストが増加すること―などが価格上昇の下支えになると予測されている。

(注2)全乳用牛飼養頭数に占める、乳用牛飼養頭数100頭以上の農家で飼養される乳用牛頭数の割合。本報告によると、22年の同割合は「70%以上」とされている。
表 一覧
【阿南 小有里 令和5年6月30日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530