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欧州委員会、食肉の短期的需給見通しを公表(EU)

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 欧州委員会は2023年7月14日、農畜産物の短期的需給見通し(注)を公表した。このうち食肉(牛・豚・鶏)の需給見通しの概要について紹介する。
 (注)欧州委員会は、農畜産物の短期的需給見通しを年3回(3月、7月、10月)、中期的需給見通しを年1回(12月)公表している。
 

牛肉

 2023年第1四半期(1〜3月)の牛肉生産量は、主要生産国のうちイタリア(前年同期比27.8%減)の牛肉価格の高止まりによる繁殖雌牛の保留から、と畜頭数が減少し減産となった影響が大きく、同3.7%減の158万トンとなった。
 この結果などをふまえ、23年の牛肉生産量は、前回(3月)見通しの前年比1.6%減から同2.0%減の659万トンに下方修正された(表1)。
 また、同年の牛肉輸出量および消費量については、EU産牛肉の供給量減少による牛肉価格の高止まりと、その結果による価格競争力の低化により、それぞれ前回見通し(同0%および1.3%減)から、同5.0%減の49万トンおよび同1.4%減の647万トン(1人当たり10.0キログラム)に下方修正された。
一方、同年の牛肉輸入量は、前回見通しから変わらず同5.0%増の37万トンに据え置かれた。
表1 牛肉における前年比増減割合

豚肉

 2023年第1四半期の豚肉生産量は、主要生産国のドイツ(前年同期比8.2%減)、スペイン(同7.3%減)、オランダ(同10.6%減)およびデンマーク(同19.9%減)などが収益性の低下から飼養頭数を減らし減産した影響が大きく、同7.7%減の541万トンとなった。
 23年の豚肉生産量は、22年12月時点の繁殖母豚の減少(前年比4.4%減)の影響もあり、前回(3月)見通しの同5.1%減から同5.5%減の2105万トンに下方修正された(表2)。
 同年の豚肉輸出量は、EU産豚肉の減産による価格競争力の低下から中国、米国、豪州、フィリピン向けなどの減少が見込まれるため、前回見通しの同3.0%減から同12.0%減の349万トンに下方修正された。同輸入量は、前回見通しの同2.0%増から同10.0%減の11万トンに下方修正された。
 同年の豚肉消費量は、豚肉の減産および豚肉価格高騰の影響を受けるものの、前回見通しの同5.5%減から同4.1%減の1767万トン(1人当たり30.4キログラム)に上方修正された。この豚肉消費の減少分は、鶏肉消費で代替されると見込まれている。
表2

家きん肉

 2023年第1四半期の家きん肉生産量は、主要生産国のポーランド(前年同期比3.0%増)、スペイン(同7.0%増)およびイタリア(同23.5%増)などが国内外の需要に支えられて増産した影響が大きく、同2.9%増の368万トンとなった。
 23年の家きん肉生産量については、22年と比べて高病原性鶏インフルエンザ(HPAI)の発生状況が落ち着いていることもあり、前回(3月)見通しの前年比1.1%増から同2.4%増の1337万トンに上方修正された(表3)。
 同年の家きん肉輸出量は、域内の価格高による競争力の低下やHPAIによる輸入禁止措置の影響を受けるものの、前回見通しの同5.0%減から同3.0%減の188万トンに上方修正された。
 一方で、同年の家きん肉輸入量は、ウクライナ産やブラジル産、タイ産の輸入の増加により、前回見通しの同7.0%増から同18.0%増の94万トンに上方修正された。
 家きん肉の消費量は、増産および輸入増による十分な供給が価格の安定につながることが見込まれることで、前回見通しの同2.5%増から同4.3%増の1243万トン(1人当たり24.1キログラム)に上方修正された。
表2 家きん肉における前年比増減割合
【渡辺 淳一 令和5年7月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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