フランス農業・食料省は7月10日、同国のでん粉原料用ばれいしょ生産者
(注1)への支援が欧州委員会で承認されたことを、同省ホームページを通じて公表した。この生産者への支援は、原則、国による補助金が禁止されている中、ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受けるEU加盟国の経済支援を可能にする枠組みに基づくものとして承認された。
同国では、生産者とでん粉企業との契約は、事前に納入価格が決定される。昨年欧州を襲った干ばつやロシアのウクライナ侵攻の影響により、肥料や燃料価格などが上昇し、でん粉原料用ばれいしょ生産者の経営状況の悪化が懸念されていた。今回の支援に関して同省は、今後もでん粉原料用ばれいしょの生産量を維持するとともに、川下産業の存続に必要な措置であると説明している。支援の概要は以下の通り。
(概要)
- 予算総額は500万ユーロ(7億8425万円:1ユーロ=156.85円(注2))
- 補償額は2021年と比べて22年に増加した1ヘクタール当たりの生産コストの最大8割
- 対象者は、22年にでん粉原料用ばれいしょを生産し、23年もでん粉原料用ばれいしょを輪作に含めて生産を継続する生産者
- 申請期間は、8月1日から6週間。同省が設置するウェブ上のプラットフォームを利用する必要があり、9月から12月末までに順次交付予定
今回の公表に対してフランスばれいしょ生産者連盟(UNPT)は、同国の農業や産業などにとって、でん粉原料用ばれいしょの生産が経済的かつ戦略的に重要であると認識されたとして歓迎の意を示した。また、国内生産を保障するために、すべての関係者と緊密に協力し、今回の支援を最大限に活用することを約束した。
一方で、同国にある2社のでん粉企業の一つであるTereos社は、本年3月に工場の売却を表明した。現地報道によれば、6月下旬時点で買い手が見つかっておらず、23/24年度が最後の操業になるのではないかとも推測されている。これに対しUNPTは、今後もばれいしょ生産の継続を希望する生産者の販路確保に向け、引き続き全面的な支援に取り組んでいくとしている。
(注1)欧州第5位(21年)のばれいしょでん粉生産国である同国のばれいしょでん粉の生産動向については、『砂糖類・でん粉情報2023年5月号』のでん粉の国際需給コラム「欧州主要国のでん粉生産動向−フランスのばれいしょでん粉−」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002920.html)を参照されたい。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年7月末TTS相場。