欧州委員会、砂糖およびバイオ燃料の短期的需給見通しを公表(EU)
最終更新日:2023年8月15日
欧州委員会は2023年7月14日、EU農畜産物の短期的需給見通し(注1)を公表した。このうち、砂糖およびバイオ燃料の需給見通しの概要について紹介する。
(注1)欧州委員会は、EU域内の農畜産物の数カ月程度の短期的需給見通し(年3回)と年1回の中期的需給見通しを公表している。
22/23年度の砂糖輸入量、てん菜の減産と記録的な価格高騰で急増
2022/23年度(10月〜翌9月)のEUのてん菜の作付面積は、穀物など収益性の高い作物への転作などにより143万ヘクタール(前年度比4.1%減)とやや減少した。この結果、同年度の砂糖生産量は、主産国のてん菜の減産などを背景に前回予測(23年4月)から42万8000トン下方修正され、1460万トン(同12.1%減)とかなり大きく減少すると見込まれている(図1、表)。
輸入量はてん菜の減産を背景に前回予測から40万トン上方修正され、240万トン(同60.0%増)と大幅な増加が見込まれている。一方、輸出量は5万トン下方修正され、50万トン(同37.5%減)と大幅な減少が見込まれている。輸入量の増加の要因として、21/22年度後半から続くEU域内の砂糖価格の高騰が挙げられる。同価格は23年2月に1トン当たり800ユーロ(12万5480円:1ユーロ=156.85円(注2))を突破し、同年6月は同817ユーロ(12万8146円、前年同月比80.4%高)と高水準で推移している(図2)。
消費量は、工業用の需要回復が伸び悩む中、食用は加工製品の輸出需要の高まりを背景に、前回予測から70万トン上方修正され、1670万トン(同1.8%減)と見込まれている。
この結果、期末在庫量は前回予測から7万トン下方修正され、130万トン(同13.3%減)とかなり大きく減少すると見込まれている。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の7月末TTS相場を使用。
23/24年度の砂糖生産量と輸出量、てん菜の増産から回復見込み
2023/24年度(10月〜翌9月)のEUのてん菜作付面積は、147万ヘクタール(前年度比3.0%増)とやや増加が見込まれている(図1)。また、てん菜生産量は、播種が例年に比べて遅れたものの、春先の雨天が生育に良い影響を与えたことから、1億900万トン(同4.8%増)とやや増加が見込まれている。この結果、砂糖生産量は、てん菜の増産などから回復し、1550万トン(同6.2%増)とかなりの程度増加が見込まれている(表)。
輸入量は、増産による国内供給量の増加から、190万トン(同20.8%減)と大幅な減少が見込まれている。一方、輸出量は記録的な低水準から回復し、70万トン(同40.0%)と大幅な増加が見込まれている(図3)。
この結果、期末在庫量は、140万トン(同7.7%増)とかなりの程度増加が見込まれている。
23年のバイオ燃料需給は、おおむね安定
2023年の生産量は、バイオエタノールが61億リットル(前年比4.7%減)とやや減少、バイオディーゼルが163億リットル(同0.6%減)と横ばいでの推移が見込まれている(図4)。バイオエタノールの原料は、主要原料の一つであるてん菜が減産することから、その代わりに農業廃棄物や残渣(さ)の利用増が見込まれており、また、すでに原料として農業廃棄物や残渣の利用が増加傾向にあるバイオディーゼルでは、この動きがより進むとともに、比較的に入手がしやすい菜種への転換も進む可能性がある。
輸送用燃料の需要は、経済活動の停滞や燃費の向上、輸送車両のEV化の進行などにから22年と比べてほとんど変化が見込まれず、また、ガソリンや軽油などへの混合率に大きな動きがみられないことから、バイオ燃料の需要も大きな変動はないと予想される。
【高田 勇一 令和5年8月15日発】
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