<黒海経由>
ウクライナの隣国であるルーマニア(図2)は、ロシアの侵攻後ウクライナ産穀物を陸路で輸送する連帯レーン
(注3)によりウクライナ産穀物4100万トンのうち2000万トン以上を輸送している。しかし、ルーマニアも穀物輸出国であるため、大量のウクライナ産穀物は穀物価格の低下につながり、ルーマニアの穀物生産者の不満を呼んだ。このため、ウクライナの近隣5カ国(ルーマニア、ポーランド、スロバキア、ハンガリーおよびブルガリア)はウクライナ産穀物の経由を除く自国への輸入を一時停止
(注4)している。
このような中、現地報道によると、ルーマニアのオドべスク外相は「ウクライナと緊密に連絡を取り合い、同国産穀物の輸送量と輸送頻度を増やす」と話しており、EU圏最大の黒海港であるコンスタンツァ港をさらに拡大している。
(注3)海外情報「欧州委員会、ウクライナ産農産物の輸出支援策を発表(EU)」を参照されたい。
(注4)海外情報「欧州委員会、ウクライナからの一部農産物の輸入を一時停止(EU)」を参照されたい。
<バルト海経由>
現地報道によると、ラトビアはこのほど、ウクライナ産穀物の輸出を今秋開始する可能性があると公表した。年間50〜100万トンのウクライナ産穀物を受け入れ、バルト海から輸出する計画となる。しかし、ラトビア国鉄のプラウニクス会長は、ウクライナからポーランドを経由しラトビアまでの鉄道ルートは鉄道のレール幅の違いにより2回の積み替え作業が必要となることで、その費用が発生するとしている。
ラトビア、リトアニア、エストニアのバルト三国の鉄道会社や港湾は、ロシアの侵攻後同国との取引を停止しており、ウクライナ産穀物を輸出物品として新たに取り扱うことで、この損失を補う算段もあるようだ。リトアニアも、ウクライナ産穀物の輸出に際しバルト海を利用するよう、EUに要請している。
<アドリア海経由>
ウクライナのクレバ外相は7月31日、クロアチアのラドマン外相と会談し、ウクライナ産穀物の輸出に際しアドリア海に面したクロアチアの港の利用について合意した。計画では、ウクライナ産穀物はドナウ川(ルーマニア、セルビア)経由でクロアチアまで輸送され、同国内で積み替えられたのち、アドリア海から輸出される。クレバ外相は「我々はクロアチアの港への最も効率的な経路を確立し、この機会を最大限に活用する。クロアチアとの合意は、世界の食料安全保障に有効であり、同国の建設的な援助に感謝している」と述べた。