ラボバンク、世界の乳業ランキングトップ20(2022年)を公表(EU)
オランダの農協系金融機関ラボバンクは8月、2022年の世界の乳業の売上高(注1)ランキング上位20社を発表した(表)。
(注1)売上高は、牛乳・乳製品類の販売のみを対象とし、22年の財務状況および23年1月1日〜6月30日までに完了した企業合併・買収(M&A)を基にしたものである。
2022年の概況
ラボバンクによると、2022年は主要生産地での生乳生産量の伸びが低く抑えられた一方、欧州域内や米国内の販売は堅調であったことから、輸出余力が低下した。これにインフレの影響もあり、22年のバター、チーズ、粉乳などの乳製品価格は高騰した。その一方で、乳製品価格の上昇分は、生乳価格や生産コストの上昇分に吸収され、多くの乳業では増益とならなかった。
上位20社の総売上高(米ドル換算)は、前年比7.4%増とかなりの程度増加した。21年も20年比で9.3%増加しており、高い伸び率が続いている。また、22年のM&A件数は前年と同程度であったものの、23年上半期は8件となり、前年同期の12件を下回った。
なお、今回のランキングについてラボバンクは、為替が大きく影響したと分析しており、米ドルやカナダドルが他国通貨に対して強く推移したため、米国、カナダの乳業が順位を引き上げた。一方で、NZドル、中国元、日本円の為替レートが米ドルに対して弱く推移したことから、フォンテラや中国の乳業が米ドルベースで順位を引き下げる方向に働き、長らくトップ20にあった明治がランク外になったとしている。
乳業各社の動向
前年に続き首位となったラクタリスは、売上高が前年比7.1%増の286億ドル(4兆2100億円:1ドル=147.20円(注2))となった。ユーロ建ての売上高では同20.5%増の272億ユーロ(4兆3900億円:1ユーロ=161.34円(注2))となっている。これは、22年の豪州のジャルナ、ドイツのBMIの生鮮乳製品部門、フランスのチーズメーカーであるヴェルダネットの買収が要因である。23年もイタリアのアンブロージなどに対するM&Aが予定されている。
第2位となった米国最大の酪農業協同組合であるデイリーファーマーズ・オブ・アメリカは、売上高が前年比26.9%増と大幅に増加し、昨年の4位から順位を上げた。対象期間中に大きなM&Aは行われなかったものの、インフレによる乳製品価格の上昇や好調な有機乳製品の販売が売り上げ増につながった。
第3位のネスレは、数年にわたり事業の再編を進めており、同社は19位のアイスクリーム製造会社であるフロネリの大株主でもある。
第4位のダノンは、各地で活発なM&Aを行っており、特に中国では、蒙牛乳業との間で、所有していた山西雅士利の株式と交換に粉ミルクの製造・販売を行う多美滋を完全子会社にしたほか、乳児向粉乳メーカーを取得した。また欧州では、スペインの製造拠点を売却する一方で、ポーランドの企業を取得している。
第5位の伊利集団は、ニュージーランド(NZ)のカナリーフーズを取得し、同国での新たなバター製造施設への投資を行っている。また、ベトナムではアイスクリーム製造拠点を建設するなど、中国で需要が伸びているチーズ、バター、アイスクリーム分野に注力している。
このほか、上位20社に新たに加わったのは、アイルランドのグランビアである。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の23年8月末TTS相場。
乳製品代替品の動向
乳製品代替品についてラボバンクは、ほとんどの乳業では数ある製品の一部となっているが、売上高に占める割合は大きくないとし、近年は、発酵工程により乳タンパク質代替品を製造する可能性に関心が移っているとしている。
【調査情報部 令和5年9月11日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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