北アイルランドへの新たな食料品移送制度が10月より開始(英国)
英国環境・食糧・農村地域省(DEFRA)は2023年9月1日、英国本島から北アイルランドへの食料品移送を支援する新しい制度が10月1日より開始されることを公表した。北アイルランド小売移送制度(NIRMS)とよばれるこの制度は、2月に合意された「ウィンザー・フレームワーク」
(注)に基づき、食料品移送に関して具体化している。
(注)ウィンザー・フレームワークの合意内容は、海外情報「英国本島と北アイルランド、農畜産物などの流通簡素化に合意(英国・EU)」を参照されたい。
北アイルランド小売移送制度(NIRMS)の概要
NIRMSでは、事前に事業者の政府のデータベースへの登録が必要となり、対象となる事業者は、食料品の販売あるいは移送に責任を持つ小売事業者、飲食事業者、給食事業者、小規模小売店に販売を行う卸売事業者などとされている。
登録された事業者は、英国本島から北アイルランド向けに移送され北アイルランド内で最終消費される食料品に関し、手続きの大幅な簡略化が認められ、この移送はグリーンレーンと呼ばれる。
一方、登録を行っていない事業者が移送する場合や、食料品最終消費地がEUとなる食料品の場合は、EUが第三国に要求するものと同じ通関手続きや各種衛生証明書の提出が必要となり、これはレッドレーンと呼ばれる。
また、EU市場に北アイルランド仕向けの食料品が流入することを防ぐため、「not for EU」という表示が段階的に義務付けられる。
2023年10月から始まる第1段階では、英国本島から北アイルランドに移送される小売向けのすべての食肉製品と飲用乳、クリーム、粉ミルク、バターミルク、カッテージチーズなど一部の乳製品が表示義務の対象となる。
24年10月からは、北アイルランド向けに限らず、国内向け(英国内)すべての食肉製品および乳製品が表示義務の対象となる。
さらに、25年7月からは、動物性加工済原料と植物性原料からなる混合食料品や青果物なども対象となる。
一部の大手小売りチェーンでは、既に7月から自主的に同マークの表示を開始している。
関係者の反応
欧州理事会は、これらの措置によって、適切な手続きを経ていない食料品がEUに流入することなく、英国本島から北アイルランドへの食料品移送が容易になると評価している。
一方、英国食肉加工業協会(BMPA)は、NIRMS開始後も、(1)データベースへの登録作業、(2)北アイルランド向けとその他向けに商品を振り分ける手間、(3)「not for EU」ラベルの添付義務が発生するため、第三国の事業者による英国への輸出よりも、英国事業者から北アイルランドへの食料品移送が複雑になるという「奇妙な状態」が続くとし、不満を表明している。
【調査情報部 令和5年9月26日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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