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欧州委員会、食肉の短期的需給見通しを公表(EU)

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 欧州委員会は2023年10月9日、農畜産物の短期的需給見通し(注)を公表した。このうち食肉(牛・豚・鶏)の需給見通しの概要について紹介する。
 (注)欧州委員会は、農畜産物の短期的需給見通しを年3回(3月、7月、10月)、中期的需給見通しを年1回(12月)公表している。

牛肉

 2023年の牛肉生産量は、前年比3.1%減の651万トンと見込まれ、前回(7月)の見通しから1.1ポイント下方修正された(表1)。23年上半期(1〜6月)の牛肉生産量は、イタリアのと畜頭数の減少(前年同期比23%減)などが影響し同4.5%減となったが、飼料価格の下落や枝肉重量の増加により、年末までには生産量の若干の回復が見込まれている。
表1 牛肉における前年比増減割合
 同年の牛肉輸出量は、トルコ向け輸出の再開や英国向けが増加した一方で、EU産牛肉の供給量減少による牛肉価格の高止まりからノルウェーや日本、米国向けなど、高価格品を中心とする市場への輸出減が影響し、前回見通しから変わらず前年比5.0%減の49万トンと見込まれる。
 同年の牛肉輸入量は、ブラジルやアルゼンチンからの輸入は増加したものの、主要な輸入先国である英国でのと畜頭数減少により、同国からの輸入量が大きく減少したことが影響し、前回の見通しから7.0ポイント下方修正され前年比2.0%減の35万トンと見込まれる。

豚肉

 2023年上半期の豚肉生産量は、すべてのEU加盟国で減少し、前年同期比8.6%減の1033万トンとなった。特に減少量が多かったのはドイツ(21万トン減、前年同期比9.4%減)、デンマーク(18万トン減、同21.5%減)及びスペイン(15万トン減、同5.8%減)であり、23年の豚肉生産量は前回見通しから1.1ポイント下方修正され、前年比6.6%減の2081万トンと見込まれる(表2)。
 EU域内の豚肉需要は堅調に推移しているものの、供給減による価格上昇から鶏肉の需要が伸びており、23年の1人当たり豚肉消費量は同4.6%減と見込まれる。供給量の減少から豚枝肉卸売価格は記録的な高値となっているものの、直近の枝肉価格は下落基調にあるため、24年の豚肉消費量は若干増加すると予測されている。
 同年の豚肉輸出量は、中国での豚肉生産の回復やEU域内での需要増に加えて、米国、日本、豪州向けの高価格品やフィリピン向けの低価格品でも輸出が低下しているため、前回の見通しから4ポイント下方修正され、前年比16%減の333万トンと見込まれる。
 同年の豚肉輸入量は、前回の見通しでは前年比10%減と見込まれたが、EUの豚肉輸入量の4分の3を占める英国での生産減を背景に大幅に減少し、同20%減の10万トンに下方修正された。
表2 豚肉における前年比増減割合

家きん肉

 2023年の家きん肉生産量は、高病原性鳥インフルエンザの発生後、飼養羽数が急速に回復していることや、飼料価格とエネルギーコストのさらなる低減などにより、前回の見通しから0.9ポイント上方修正され、前年比3.3%増の1349万トンと見込まれる。これは、主要生産国のイタリアおよびスペインなどが国内外の需要に支えられ増産した影響が大きい。
 同年の家きん肉輸出量は、ガーナ、リベリアおよびウクライナ向け輸出量は減少するものの、英国、ベトナムおよびアンゴラ向けの増加から、前回の見通しから変わらず、同3.0%減の188万トンと見込まれる。今後、価格競争力を取り戻せば、24年には前年比増に転じると予測されている。
 一方で、同年の家きん肉輸入量は、ウクライナ、ブラジルおよびタイからの輸入が大幅に増加するものの、英国からの輸入量が大幅に減少するとの見込みから、前回見通しの同18.0%増から同12.0%増の89万トンに下方修正された。
家きん肉の消費については、増産および輸入増による十分な供給が価格の安定や他の食肉との価格競争力につながることが見込まれるため、23年の1人当たりの消費量は、前年比4.9%増の1キログラム近い増加が見込まれる。
表3 家きん肉における前年比増減割合
【藤岡 洋太 令和5年10月16日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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