2023年の鶏肉輸入量は過去最高水準に増加(韓国)
韓国関税庁の統計データによると、2023年の韓国の鶏肉輸入量は、確認できる2000年以降では、これまでにないほど急増し、23年1〜8月の輸入量は前年同期比28.2%増の15万8871トンとなった。22年も下半期を中心に鶏肉輸入量が増加し、年間輸入量は18万1625トン(前年比22%増)と過去最高を記録しており、23年は22年をさらに上回って推移している(図1)。
この記録的な輸入量増加の背景としては、22年7月からたびたび実施されている鶏肉輸入に関する関税率の引き下げが影響しているとされる。韓国農林畜産食品部は22年7月20日、飼料価格および鶏肉価格の高騰に対応し、消費者への安定供給を確保することを目的に、同年末までの期間を対象として8万2500トンの鶏肉無関税輸入枠(注1)の設定を公表した。この取り組みは同年末に一度区切りを迎えたが、その後も同年12月30日付で翌23年1月1日〜3月31日までの期間に3万トン、4月28日付で同年5月1日〜6月30日までに3万トン、7月1日付で同年7月1日〜12月31日までに3万トンの無関税輸入枠が断続的に設定された。また、8月24日付で12月末までの上記無関税輸入枠が6万トンに拡大された(表)。
韓国では世界的な飼料価格高騰の影響を受け、22年から国内の養鶏向け配合飼料価格が高騰している。23年度の同価格は、20年時と比較して1キログラム当たり200ウォン(23円、100ウォン=11.31円(注2))程度高騰している(図2)。これに伴い、鶏肉価格も22年に入り上昇傾向を示しており、23年は22年をさらに上回る価格で推移している(図3)。
現地報道によると、鶏肉輸入の拡大を消費者価格の安定に結び付けることに国内の肉用鶏業界から疑問視する声が上がっている。また、輸入される冷凍鶏肉の用途は限られ、輸入量の増加による鶏肉価格への影響が見られないことや、政府の対策が国内の生産者に対する支援ではなく、流通・輸入業者に限られている点が問題視されている。さらに、韓国肉用鶏協会会長のコメントとして「人件費や飼料費などあらゆる生産コストが高騰している中で、関税を引き下げて供給量を増やし、価格を安定させようとすることは、視野の狭い思考である。鶏肉価格安定のためには生産環境などの供給構造に着目する必要がある」としている。
(注1)無関税輸入枠には鶏肉調製品も含まれている。2022年の鶏肉調製品輸入量は3万4074トンであるため、同年の鶏肉および鶏肉調製品を合わせた輸入量は約22万トン程度である。本年も同程度輸入されると仮定した場合、23年無関税輸入枠12万トンは年間輸入量の5割強に相当する(参考−図)。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年9月末TTS相場。
【海老沼一出 令和5年10月19日発】
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