ビクトリア州、22/23年度の酪農家収益は前年度比60%増(豪州)
豪州ビクトリア(VIC)州政府の研究機関であるアグリカルチャー・ビクトリア(AV)と酪農団体のデイリー・オーストラリア(DA)は2023年10月2日、毎年共同で実施している酪農モニター調査(注1)の結果を公表した。
(注1)酪農モニター調査は、VIC州北部、南西部、ギプスランド(図1の赤い枠のエリア)の酪農経営者80名を対象に、州内の生乳生産および経営状況に関する調査・分析を行うもので、調査開始の2006/07年度(7月〜翌6月)以降毎年実施され、今回で17回目の調査となる。
(1) 生乳生産量等
これによると、2022/23年度(7月〜翌6月)のVIC州の生乳生産量は、514万キロリットル(前年度比5.2%減)と前年度をやや下回ったが、豪州全体の生乳生産量の63%を占めている。生乳生産量の減少要因として、州内の大部分で平年以上の多雨が記録されたことで、牧草の生育不良につながったことが挙げられている(図2)。特にVIC州北部では、搾乳期の9〜11月までの3カ月間で例年の2倍以上の降雨量となり、広範囲にわたって洪水が発生したことで、牧草の品質低下や飼料確保に影響が生じた。この結果、同州の牧草収穫量(放牧+保存用飼料)は、1ヘクタール当たり平均6.9トン(乾物換算、前年比6.8%減)とかなりの程度減少し、直近5年間では過去最低となった(図3)。また、飼料代謝エネルギーに占める自家採取飼料の割合は59%となり、14/15年度以来、8年ぶりの60%割れとなった。
(2) 経営状況
ア 支出
VIC州の多くの酪農家では、天候不良による牧草の生育不良や品質低下の影響を受ける中で、1頭当たりの乳量を維持するために、濃厚飼料の追加購入を迫られた。
このため、2022/23年度の飼料費は、生乳の固形分(注2)1キログラム当たり平均4.35豪ドル(427円:1豪ドル=98.06円(注3)、前年度比18.5%増)と大幅に増加し、飼料費の高騰が変動費(注4)全体の増加を牽引した(表)。また、固定費を含む支出全体では同7.99豪ドル(783円、同11.7%増)と調査開始の06/07年度以降、過去最高となった。
(注2) 乳脂肪分および乳タンパク質。
(注3) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年9月末TTS相場。
(注4) 農場の生産規模によって変動する費用。飼料費のほか、牛群管理費(医療費、牛群検査費用、人工授精および子牛の飼育にかかる費用など)、牛舎管理費(牛舎の水道光熱費、搾乳用ゴム製品の購入費など)が含まれる。
イ 収入と税引き前利益
2022/23年度は、生乳生産量が減少する中で、乳量確保に向けて乳業各社が生産者支払乳価を引き上げたことで、同乳価は生乳の固形分1キログラム当たり平均9.77豪ドル(958円、前年度比25.7%高)と過去最高を記録した(表参照)。また、記録的な乳価に支えられた収入増が飼料費などのコスト増を相殺したことで、税引き前利益は同2.86豪ドル(280円、同57.1%増)と大幅に増加し、過去最高を記録した07/08年に次ぐ過去2番目の高水準となった。酪農家1農場当たりの税引き前利益では、61万7000豪ドル(6050万円)と前年度の38万4000豪ドル(3766万円)から60%増加し、調査対象の80農場のうち77農場で黒字を計上した。
【工藤 理帆 令和5年10月23日発】
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