北米ばれいしょ業界、持続可能性に向けた取り組みを強化(米国・カナダ)
最終更新日:2023年10月25日
米国およびカナダのばれいしょ関係企業などで構成するばれいしょ持続可能性協会(PSA:Potato Sustainability Alliance)は10月4日、会員の大手農薬・種苗会社として知られるシンジェンタ社と提携し、ばれいしょ生産者の持続可能性に向けた取り組みの評価・改善に取り組むことを発表した。シンジェンタ社が定めた「農業の持続可能な成果(SOA)水準」を活用することで、各農場における持続可能性の水準を評価し、生産者による取り組みの改善を促すという。
1 PSAの持続可能性への取り組み
ばれいしょ持続可能性協会(PSA)は、米国およびカナダにおけるばれいしょサプライチェーンの各セクターの主要企業・団体で構成される(表)。サプライチェーン全体で連携し、持続可能性の定義や指標を明確にすることで、ばれいしょ業界の持続可能性への取り組みを改善・推進することとしている。
PSAは、ばれいしょ業界の持続可能性の重点分野として、「環境スチュワードシップ」「農場の財産」「安全で高栄養価の食品」といった三分野を設定し、それぞれに項目を位置付けている(図1)。
特に、PSAの会員企業・組織が網羅する米国およびカナダにおける550以上のばれいしょ生産農場では評価プロセスが重要であり、評価を基に改善を継続する必要があるとしている。今回のシンジェンタ社との提携は、この農場評価のためのツール提供であり、農場での自己評価と地域データの提供に加え、改善に向けた検証が可能になるという。
2 環境再生型農業を実現するためのSOA水準
シンジェンタ社によって定められた農業の持続可能な成果(SOA)水準は、環境再生型農業(注)を実現するために、農場レベルの持続可能性に向けた取り組みの進捗状況を評価・測定し、取り組みを改善することを目的としている。
このSOA水準の枠組みとして、作物の生産最適化、水系への影響、土壌の健全性などの6つの成果項目とこれらを達成するための主要戦略が設定されており、主要戦略の実践状況の水準(リーダーシップ・レベル)を基にして、成果項目ごとの当該農場の水準(リーダーシップ・パフォーマンス)をレベル1から4まで評価することとされている(図2)。そして、当該農場の生産データの分析を経て、リーダーシップ・パフォーマンスを地域ごとに算出される統計値と比較しながら改善につなげていく。また、SOA水準には検証オプションが付されており、持続可能であることを謳うばれいしょを生産する場合には、第三者検証機関による監査を受けることが可能である。
SOA水準をPSAの取り組みに導入することについて、同プログラム・マネージャーであるネスバーグ氏は「シンジェンタ社のSOA水準を用いることで、データ収集と報告プロセスの合理化を図り、特に生産者の負担を軽減させながら業界の目標に向かって取り組むことができる」と期待を寄せている。
(注)排出された炭素や窒素を土壌に固定しながら土壌、水質、生態系といった自然環境の回復を目指す農業。
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