家畜で初となる、豚のと畜工程の品質管理に関する規則を公布(中国)
中国農業農村部は2023年9月12日、家畜について初となる、豚のと畜工程の品質管理に関する規則「豚と畜品質管理規則」(原語:生猪屠宰質量管理規范)を公布した。施行は24年1月1日とされている。
「豚と畜品質管理規則」の概要
今夏の豚肉価格の下落以降、豚肉の価格動向および養豚業界に対する政府からの支援に注目が集まっている中で、中国政府から公表された主要な政策が本規則である。
中国の豚に関する政策は、生産・供給の安定および食品安全の確保の2方面を対象としており、今回公布された「豚と畜品質管理規則」(日本の省令に相当)は食品安全の確保に関する政策に該当する。
また、本規則は2021年に改正公布された「豚と畜管理条例」(日本の政令に相当)を受けて制定されたもので、同条例の柱は、次の5つである(条例制定に合わせて行われた農業農村部の政策解説会見に基づく)。
(1) 生体豚のと畜場搬入時の検査
(2) と畜工程全体の品質管理
(3) 出荷の記録
(4) 適当でない生体豚の分離
(5) リスク管理
本規則の制定目的は、本条例に即し、豚のと畜工程の品質管理における基本原則と施設側が満たすべき要件を提示することであり、基本的な考え方は、次の3つである(同じく規則制定に合わせて行われた政策解説会見に基づく)。
(1) と畜工程全体の管理。生体豚がと畜場に搬入されてから食肉などとして出荷されるまでの全工程の品質管理を強化する。
(2) 責任の明確化。責任者および責任を負う職位を明確にし、品質と安全性に責任を負う者が確実に責任を取る仕組みを整える。
(3) と畜(工)場全体のレベルの向上。と畜に関する施設、技術、工程管理などの基準を明確にし、と畜(工)場のレベルが低いなどの問題を解決し、業界全体のレベルを向上・格上げする。
と畜場については、本規則の内容を一部先取りする形で、2018年に農業農村部が制定した「全国豚と畜標準化創建実施方案」(2016年の「全国農業現代化計画」に基づく。)により、豚肉の高品質・高安全を保障すると畜レベルであるなどの基準を満たすモデル施設を登録する制度(「農業高品質発展標準化モデルプロジェクト(豚と畜標準化建設)モデル企業」制度)が既に実施され、23年9月には本年分として新規登録された25社が公表された。この制度に基づき19年以降に登録された累計数は150企業に達し、登録企業の年間と畜頭数は1200万頭に上る。
【参考】 中国の豚肉生産・消費、価格および業界の動向
中国の人口1人当たりの食肉消費量は34.6キログラムであり、そのうち豚肉は26.9キログラムを占める。2022年の中国の豚肉生産量は前年比4.6%増の5541万トン、消費量は同0.8%増の5705万トン、平均価格は同8.7%安の1キログラム当たり30.72元(638円:1元=20.76円)であった(注)。
中国の豚肉価格については、近年、右下がり傾向で推移し、また、変動幅が大きいことが業界関係者の懸念となっている。23年の同価格は、5月以降前年比安の状況にあり、7月以降に至ってはさらに価格の下落幅が大きく、前年の7〜8割程度で推移している。上場企業も2021年以降、月単位で赤字となる傾向にあり、23年は赤字の継続が5カ月以上と長期化する傾向が強まっている。このため、各企業では株式の売却、生産施設の縮小などが行われており、引き続き政府による業界支援の動向が注目されている。
【調査情報部 令和5年10月31日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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