畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2023年 > 国際酪農連盟、米国で世界酪農サミットを開催(米国)

国際酪農連盟、米国で世界酪農サミットを開催(米国)

印刷ページ
 国際酪農連盟(IDF)は10月16日から19日までの4日間にわたり、米国イリノイ州シカゴにおいて世界酪農サミット(WDS)を開催した。米国での開催は、1993年以来30年ぶりとなった。1903年のIDF設立から120周年を迎えた今回のWDSには、日本を含む55カ国から1240人以上の酪農・乳業関係者が集まった。
 今回のWDSのテーマは「果てしない潜在性と無限の可能性(Boundless Potential Endless Possibilities)」とし、世界における牛乳・乳製品の需給および市場動向と展望、酪農・乳業業界の持続可能性、食料安全保障、栄養、酪農分野の技術革新など多岐にわたる分野について講演やパネル・ディスカッションが開かれた。
 開会初日の冒頭では、ヴィルサック農務長官による演説が行われた他、IDFは世界の酪農・乳業をめぐる課題に対する協力的な取り組みの意義を強調する声明を発表した。本稿ではその概要を紹介する。

1 ヴィルサック農務長官による演説

 ヴィルサック農務長官は、米国農業全般や酪農における大きな課題として、「気候変動による影響」「過度な集約化と大規模化」「農業所得の大規模農場への集中」「サプライチェーンの混乱」といった四つの課題を挙げた(表1)。
表1 ヴィルサック長官が示した米国農業・酪農における四つの課題
 また同長官は、これらの課題に対応する米国農務省(USDA)の取り組みとして、「気候変動に配慮した商品のためのパートナーシップ・プログラム」を紹介した。本プログラムは、気候変動に配慮した農畜産物の市場拡大や市場機会を捉えた生産者の収益増加を目的に、酪農生産者、団体・組合、州政府・地方自治体、大学・研究機関、民間企業、環境保護団体などがパートナーシップを組んで実施する取り組みを支援するものである(注1)。USDAは141の取り組みに対し、総額31億2500万米ドル(4703億4375万円:1米ドル=150.51円(注2))を措置している。
(注1)『畜産の情報』2023年3月号「米国における持続可能な酪農・肉用牛生産に向けた取り組みについて」を参照されたい。
(注2)三菱UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年10月末TTS相場。


 具体的な取り組みとして、同長官は、(1)カリフォルニア酪農研究財団のふん尿管理の改善によるメタン排出量削減 (2)エッジ酪農協同組合の気候変動に配慮した生産方法の導入と市場拡大 (3)デイリー・ファーマーズ・オブ・アメリカ社の低炭素乳製品による市場機会の創出と循環経済の確立 (4)カーボン・A・リスト社のふん尿の付加価値化 の4件を例に挙げ、生産者が気候に配慮した農法を実践し、その成果を農畜産物の価値に付加することは、収益を増やすチャンスであると述べた。そして、このチャンスは大規模農場だけではなく、中小規模農場にも行き渡るものであるとし、中小規模農場のために、農村地域が活気を維持できるような機会を創出していきたいと付け加えた。

2 IDFによる声明

 IDFは世界の牛乳・乳製品の生産国を代表し、酪農・乳業業界の次世代を担うリーダーたちが協力することで持続可能な栄養供給に取り組み、世界に前向きな変化をもたらすことの重要性を強調する声明を発表した。
 本声明では、(1)酪農・乳業業界は世界の消費者の栄養改善を支援するコミットメントを有すること、(2)人、動物および地球にとってより持続可能な未来に貢献するという野心を有すること、(3)生産者の生活を支えるとともに雇用創出などによる地域社会への貢献といった役割を有すること、(4)これらを踏まえ、各国政府、国際機関、世界の食品業界に対して支持を呼びかけることとした(表2)。
表2 IDFによる声明の主な内容
【調査情報部 令和5年11月2日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部)
Tel:03-3583-9533