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米国食肉業界、持続可能性への取り組みの進捗状況を報告

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 食肉処理・加工企業を主要会員とする北米食肉協会(NAMI)は10月5日、自ら主導するプロテインPACT(Protein for the People, Animals, and Climate of Tomorrow)の目標に対する進捗状況を報告した。プロテインPACTとは、持続可能な食肉供給に向けて「人」「動物」「環境」における動物性タンパク質の貢献を強化するための取り組みとして、NAMIが2021年7月に立ち上げたものである。重点分野には「環境」「アニマルウェルフェア(AW)」「労働力・人権」「食品安全」「健康・栄養」の5項目を掲げ、それぞれに目標を設定している(図)(注1)
(注1)『畜産の情報』2023年3月号「米国における持続可能な酪農・肉用牛生産に向けた取り組みについて」を参照されたい。
プロテインPACTの全体目標と項目別目標

1 全体目標の進捗状況

 2021年7月以降、87社(前年から36社増加)の企業が各重点項目の取り組みの点検結果を報告した。その内訳は、従業員数2000人以上の企業が14社、同300人以上2000人未満の企業が45社、同300人未満の企業が28社であり、米国全体の54%を占める470施設(前年から94施設増加。以下「報告施設」という)をカバーしている。NAMIによると、これらの施設で処理・加工されている食肉は米国全体の90%以上を占めるという。

2 項目別目標の進捗状況

(1)環境
 食肉処理・加工企業や流通企業といった一般会員企業14社(前年から3社増加)に加え、外食企業や小売企業などの関連会員企業10社が温室効果ガス(GHG)排出量削減のための科学的根拠に基づく目標(SBT:Science-Based Target)を設定済み、あるいは設定することの公約に至った。なお、スコープ1および2(注2)のGHG排出量削減目標を設定している企業は報告施設の66%、スコープ3(注2)の目標を設定している企業は報告施設の62%をカバーしているという。
(注2)スコープ1:事業者自らによるGHGの直接排出、スコープ2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出、スコープ3:スコープ1、2以外の間接排出(事業者に関連する他社の排出)。

(2)AW
 報告施設の73%が第三者機関による年1回の監査に合格、85%が家畜の供給元に対する従業員訓練を義務化、86%がNAMIの家畜取扱ガイドラインに基づいたAWプログラムを実践、82%がAW輸送プログラムを策定している。

(3)労働力・人権
 2022年の労働災害に関する政府公表データは未公表であるため、労働災害の削減という目標に対する進捗状況は示すことができないとしつつ、報告施設の92%が書面化した労働者安全プログラムを実践、91%が労働安全に関する研修を開催、79%が国連世界人権宣言に基づいた施設運営を実践、74%が多様性および公平性を宣言するなど、労働環境の改善は進んでいるとの見解を示した。

(4)健康・栄養
 報告施設の60%がフードバンクへの寄付、47%がその他の食料支援団体への寄付を実践している。例えば、タイソン・フーズ社は22年にフードバンクに250万米ドル(3億7628万円:1米ドル=150.51円(注3))を寄付、23年に250万ポンド(1134トン)のタンパク質性食品を寄付、スミスフィールド社はハリケーンによる被害を受けたフロリダ州の地域住民に2万8000ポンド(12.7トン)のタンパク質性食品を寄付したという。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年10月末TTS相場。

(5)食品安全
 食品安全は食肉業界にとって習慣的な分野であるとして、明確な目標は設定していないものの、報告施設の93%が食品安全プログラムの定期的な見直しと改善措置を講じる学識チームを設置、92%が第三者機関による年一回以上の食品安全監査を実施、80%が第三者機関による食品安全監査に合格した上で継続的改善目標を設定するという公約を実践するなど、食品安全に向けた取り組みの進捗を報告した。
【調査情報部 令和5年11月8日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部)
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