米国農務省、農畜産物輸出支援に関する予算措置を発表
米国農務省(USDA)は10月24日、地域農業振興プログラム(RAPP)の新設と米国産農畜産物の輸出拡大に向けて総額13億米ドル(1957億5400万円:1米ドル=150.51円(注))の予算措置を発表した。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年10月末TTS相場。
1 RAPP新設の背景
USDAは前政権時の2018年、輸出市場の多様化を図るために農産物貿易促進プログラム(ATP)を創設したが、本プログラムは24年に終了予定であり、輸出事業者によるATPの活用は縮小しているとされる。このような中、23年の米国の農畜産物貿易収支は190億米ドル(2兆8596億9000万円)の赤字が見込まれており、24年には275億米ドル(4兆1390億3000万円)にまで赤字が拡大するとみられている。
USDAは、輸出市場の開拓に1米ドル(150.51円)を投資すると輸出額が24.50米ドル(3688円)増加すると分析し、アジアやアフリカにおける輸出市場で競争が激化する中、生産者の収益性向上に寄与するため、既存市場の維持と新市場の開拓への投資が必要であるとしている。
こうした状況を踏まえ、USDAはRAPPを新設し、輸出事業者による市場参入を促し、シェア(市場占有率)の拡大を支援することとした。USDAは、ATPが終了することで輸出市場の機会創出に必要な人間関係および信頼関係の維持・構築に影響が生じぬよう、関係の継続性を確保する意向である。
RAPPの詳細は明らかにされていないが、消費者向けプロモーション、食品展示会への参加、市場調査、技術支援など、米国業界団体の活動に要する費用を補助するATPと同様の支援が行われると見込まれている。
また、今回の支援策の発表に併せUSDAは、別途10億米ドル(1505億1000万円)の予算を措置し、米国国際開発庁(USAID)と協力の上、食料不安を抱える国々を対象とした食糧援助に資するための輸出にも取り組み、食料を必要とする人々への支援とともに、米国農業に寄与することとしている。
2 米国農畜産業界の反応
USDAによるRAPPの新設と予算措置には、州農業省全国協会(NASDA)、米国食肉輸出連合会(USMEF)、全米生乳生産者連盟(NMPF)、米国乳製品輸出協会(USDEC)、米国穀物協会(USGC)など多くの米国業界団体から称賛の声が上がっている。主な業界団体の反応は以下のとおりである。
(1)NASDA マッキニー会長
NASDAは、USDAが世界中で需要のある米国産農畜産物をより効果的にプロモーションするためにRAPPを新設したことを称賛する。RAPPにより生産者の所得を向上させるだけでなく、農業・食品業界における雇用創出につながるだろう。
(2)USMEF ホルストロム会長
USDAが輸出市場の開拓を重視してくれたことに感謝する。新市場の開拓を支援してきたATPが終了しようとしている今、輸出市場の開拓への新たな予算措置は時機を得たものである。
(3)NMPF マルハーン会長
USDAが輸出市場の開拓に予算を措置してくれたことに感謝する。米国酪農業界が輸出に大きく依存している中で、資金不足に悩む酪農業界にRAPPの資金が配分されれば、国際競争でより優位な立場で消費基盤を拡大することができる。
(4)USDEC ハーデン会長
USDAが米国農業を支援するために重要な段階を踏んでいることに感謝する。酪農家や乳業メーカーは貿易機会の拡大により利益を得ており、新たな輸出市場の創出や高栄養価である乳製品の供給など、引き続き米政府や議会と協力していきたい。
(5)USGC レグランド会長
USDAが新たなプログラムの創設と予算措置により、輸出市場の開発を継続することに感謝する。RAPPを通じて官民が連携し、トウモロコシ、ソルガム、大麦、それらの副産物の輸出を拡大できることを楽しみにしている。
【調査情報部 令和5年11月10日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部)
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