農業関連各社のGHG排出量削減に向けた取り組み例として、フォンテラ社は23年11月、最新の持続可能性に関するレポートを取りまとめて公表している。これによると、同社はGHG排出量を2030年に18年比で半減するという目標を掲げており、スイス資本の世界的乳業会社であるネスレ社と連携して酪農家向けのGHG排出量削減をサポートするサービスを提供するほか、輸送機関や輸出業者と連携して低炭素排出によるサプライチェーンを確立する取り組みを行っている。また同社は、NZ政府と農業ビジネス企業により22年に設立された投資ファンド「アグリゼロ」に対し、今後3年間で最大5000万NZドル(45億円:1NZドル=89.21円
(注1))を拠出し、同ファンドを通じて同国のマジー大学の酪農研究農場でのメタン測定施設の整備や家畜用メタン排出抑制剤の研究開発などに充てるとしている。このほか、飼料効率を高めるプロバイオティクス
(注2)の実用化に向けた取り組みや、石炭燃料に依存している乳業工場の脱炭素化、電動ミルクローリーの導入数増加などに取り組んでいるとしている
(注3)。また、シルバーファーンファームズ社などの食肉加工会社でも、各社のウェブサイトなどでGHG排出量削減に向けた取り組みが紹介されており、農場内の炭素隔離に関する投資や、カーボンゼロ牛肉の認証取得による販売、30年までの石炭使用量ゼロを目指した取り組みなどが行われている。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の23年10月末TTS相場。
(注2)適正量を摂取した場合、腸内細菌叢のバランス改善によって、宿主の健康などに好影響を与える生きた微生物。
(注3)畜産の情報2023年3月号「豪州およびニュージーランドの畜産業界における持続可能性 〜気候変動対策を中心に〜」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_002629.html)の「コラム フォンテラ社における持続可能性に関する取り組み例」も参照されたい。