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NZ政府、温室効果ガス排出量に関する報告書を公表(NZ)

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 ニュージーランド(NZ)の環境保護局(EPA)は2023年9月、同国の気候変動対応法に基づき、22年7月から23年6月までの1年間における温室効果ガス(GHG)排出量に関する報告書を公表した。同国の気候変動に関する情報開示法では、すべての企業に気候変動への影響に関する公表を義務化しておらず、GHG排出量が多い企業でも自社の排出量を公表していない場合がある。このためEPAでは、産業別のGHG排出量などを含む同報告書がさまざまな企業のGHG排出量を追跡できる有効な手段としている。
 これによると、産業別では農業のGHG排出量が3243万トンと最も多く、全体の49%を占めている(図)。
図 産業別温室効果ガス排出量(2022.7〜2023.6)
 また本報告書では、GHG排出量取引制度に参加する企業のGHG排出量も公表されている。これによると、同国乳業最大手のフォンテラ社が3年連続で最も多くGHGを排出した企業となっており、1280万トンが排出されたとしている(表)。このほか農業関係ではいずれも食肉加工会社であるシルバーファーンファームズ社(同5位、310万トン)、アライアンス社(同7位、270万トン)、アフコ社(同8位、250万トン)が上位10位以内に入っている。
 上記企業上位10社で4340万トンのGHGが排出されたとしているが、各社で排出削減の取り組みが進み、前年比で排出量は200万トン減少したとしている。
表 GHG排出量の企業別ランキング 上位10位
 農業関連各社のGHG排出量削減に向けた取り組み例として、フォンテラ社は23年11月、最新の持続可能性に関するレポートを取りまとめて公表している。これによると、同社はGHG排出量を2030年に18年比で半減するという目標を掲げており、スイス資本の世界的乳業会社であるネスレ社と連携して酪農家向けのGHG排出量削減をサポートするサービスを提供するほか、輸送機関や輸出業者と連携して低炭素排出によるサプライチェーンを確立する取り組みを行っている。また同社は、NZ政府と農業ビジネス企業により22年に設立された投資ファンド「アグリゼロ」に対し、今後3年間で最大5000万NZドル(45億円:1NZドル=89.21円(注1))を拠出し、同ファンドを通じて同国のマジー大学の酪農研究農場でのメタン測定施設の整備や家畜用メタン排出抑制剤の研究開発などに充てるとしている。このほか、飼料効率を高めるプロバイオティクス(注2)の実用化に向けた取り組みや、石炭燃料に依存している乳業工場の脱炭素化、電動ミルクローリーの導入数増加などに取り組んでいるとしている(注3)。また、シルバーファーンファームズ社などの食肉加工会社でも、各社のウェブサイトなどでGHG排出量削減に向けた取り組みが紹介されており、農場内の炭素隔離に関する投資や、カーボンゼロ牛肉の認証取得による販売、30年までの石炭使用量ゼロを目指した取り組みなどが行われている。

(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の23年10月末TTS相場。
(注2)適正量を摂取した場合、腸内細菌叢のバランス改善によって、宿主の健康などに好影響を与える生きた微生物。
(注3)畜産の情報2023年3月号「豪州およびニュージーランドの畜産業界における持続可能性 〜気候変動対策を中心に〜」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_002629.html)の「コラム フォンテラ社における持続可能性に関する取り組み例」も参照されたい。
【調査情報部 令和5年11月16日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530