乳牛の繁殖能力に関する現状と展望(英国)
英国農業・園芸開発委員会(AHDB)は10月24日、英国の乳牛の繁殖能力について現状と展望を報告した。
乳牛の分娩間隔は、2008年まで一貫してその日数が増加していたが、09年以降短縮して推移している(図)。
この要因についてAHDBは、以前は乳量を重視し繁殖能力面で不利な後継牛であっても選抜していたが、05年の繁殖指数(Fertility Index。以下「FI」という。)(注)の導入や他の指標の開発により、後継牛の選択基準に繁殖能力を含めることが容易になったためとしている。
(注)(1)分娩間隔(2)経産牛の非受胎率(3)ボディコンディションスコア(4)人工授精前後の乳量(5)出産から最初の人工授精までの日数(6)人工授精の回数−の6つの基準により、+15から−15の範囲で表される雌牛の繁殖能力の指数。例えば指数が−3から−2になると、分娩間隔は0.6日短くなり、経産牛の非受胎率は0.25%改善する。
AHDBでは、繁殖成績は環境要因に大きく影響を受けるとしつつも、FIは遺伝的に優良な繁殖能力を持つ牛を特定するのに有効であり、繁殖能力の改善はその後の世代に蓄積され、大きな効果を得られるとしている。
AHDBの繁殖部門責任者は、「2000年代後半の平均分娩間隔は最長で425日であったが、現在では395日近くまで短縮されている」と生産者の努力を称賛している。
同委員会は、今後の見通しについて、短縮のペースは緩やかになるものの、今後5年間は年1日以上分娩間隔を短縮し続けることが可能とし、29年までには385日に短縮できると見込んでいる。この分娩間隔は1990年代半ばと同水準になるが、1頭当たり乳量は当時より大幅に増加している(表)。
また、この報告では飼養規模700頭の酪農家を具体例とし、2005年のFI公表時にこれを導入し、分娩間隔を当時の420日から現在では380日に短縮することに成功したことを紹介している(乳脂肪分4.0%、乳タンパク3.28%、1頭当たり乳量は1万3500キログラム)。
【調査情報部 令和5年11月20日発】
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