米国鶏肉業界では過去40年の間に垂直統合(インテグレーション)が進み、鶏肉企業が肉用鶏生産者と委託契約を交わす形態が主流となっている。90%以上の肉用鶏生産者が契約生産者であり、そのほとんどの契約には、契約生産者同士で生産コストの削減を競わせる報酬支払いの仕組みである「家きん生産者トーナメントシステム」
(注2)が採用されている。
しかし、契約に際して生産者の意思決定に必要な情報は開示されておらず、契約を交わす鶏肉企業を選択する余地もないという。一般的に鶏肉企業が供給するひなや飼料は生産者の報酬に影響するものの、鶏肉企業にそれらについて大きな裁量があり、生産者ごとに投入資材の不公平な配分が行われる場合があるなど、契約生産者間の公平性や市場の公正性は鶏肉企業に依存しているとの指摘も多い。
このような状況を踏まえ、バイデン政権は2021年7月、大統領令「米国経済の競争促進」に基づき農務長官に対し、家きん生産者トーナメントシステムによって生じる不公正を解消すべく新たな規則制定を検討するよう指示したのである。そしてUSDA/AMSは、鶏肉企業から生産者への情報開示を義務付けるべく、22年6月の規則案の策定・公表、同年8月までのパブリックコメントの実施
(注3)を経て、今般、最終規則を制定・公表するに至った。
(注2)家きん生産者トーナメントシステム:報酬額の算出に契約生産者同士で生産コストの削減を競わせる仕組みを導入したシステム。契約生産者への報酬額は「出荷時の肉用鶏総重量」に「重量当たり報酬額」を乗じることで決まるが、一般的に、「重量当たり報酬額」は、他の契約生産者よりも生産コストを減らせば減らすほど上乗せされる仕組みになっている。
(注3)詳細は「【海外情報】米農務省、肉用鶏生産者と鶏肉企業の契約システムに新たな規則案(米国)(令和4年8月31日発)」を参照されたい。