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米国農務省、肉用鶏生産者・鶏肉企業間の契約システムの最終規則を公表(米国)

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 米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)は11月8日、パッカー・ストックヤード法(注1)に基づく家きん生産者トーナメントシステムに新たな規則を追加した最終規則を制定・公表した。最終規則は2024年2月に施行予定である。
(注1)パッカー・ストックヤード法:食肉企業が不公正で欺瞞的な慣行を行うこと、価格の操作を行うこと、独占を形成することなどを禁止するために1921年に制定された連邦法。

1 背景

 米国鶏肉業界では過去40年の間に垂直統合(インテグレーション)が進み、鶏肉企業が肉用鶏生産者と委託契約を交わす形態が主流となっている。90%以上の肉用鶏生産者が契約生産者であり、そのほとんどの契約には、契約生産者同士で生産コストの削減を競わせる報酬支払いの仕組みである「家きん生産者トーナメントシステム」(注2)が採用されている。
 しかし、契約に際して生産者の意思決定に必要な情報は開示されておらず、契約を交わす鶏肉企業を選択する余地もないという。一般的に鶏肉企業が供給するひなや飼料は生産者の報酬に影響するものの、鶏肉企業にそれらについて大きな裁量があり、生産者ごとに投入資材の不公平な配分が行われる場合があるなど、契約生産者間の公平性や市場の公正性は鶏肉企業に依存しているとの指摘も多い。
 このような状況を踏まえ、バイデン政権は2021年7月、大統領令「米国経済の競争促進」に基づき農務長官に対し、家きん生産者トーナメントシステムによって生じる不公正を解消すべく新たな規則制定を検討するよう指示したのである。そしてUSDA/AMSは、鶏肉企業から生産者への情報開示を義務付けるべく、22年6月の規則案の策定・公表、同年8月までのパブリックコメントの実施(注3)を経て、今般、最終規則を制定・公表するに至った。
(注2)家きん生産者トーナメントシステム:報酬額の算出に契約生産者同士で生産コストの削減を競わせる仕組みを導入したシステム。契約生産者への報酬額は「出荷時の肉用鶏総重量」に「重量当たり報酬額」を乗じることで決まるが、一般的に、「重量当たり報酬額」は、他の契約生産者よりも生産コストを減らせば減らすほど上乗せされる仕組みになっている。
(注3)詳細は「【海外情報】米農務省、肉用鶏生産者と鶏肉企業の契約システムに新たな規則案(米国)(令和4年8月31日発)」を参照されたい。

2 最終規則の概要

 最終規則では、契約生産者間の公平性および市場の公正性と競争性を確保するために、鶏肉企業が肉用鶏生産者と契約を締結・更新する遅くとも14日前、生産者が認める場合には7日前までに契約や報酬に関する情報として、(1)過去5年間における契約生産者との訴訟履歴、(2)鶏肉企業とその親会社や子会社などの関連企業の破産申請状況、(3)契約生産者の契約解消率、(4)当該地域における契約生産者への報酬の年間総支払額−などを当該生産者に開示することを義務付けた(図)。これにより、生産者は鶏肉企業と契約を締結・更新する前に、契約内容を評価することが可能になる。
 また、鶏肉企業が導入する鶏に関する情報や、他の契約生産者に提供する投入資材に関する情報を他の契約生産者に開示することを義務付けた。これにより、契約生産者間の公平性を確保するとともに、自身の成績を他の契約生産者と比較・評価することが可能になる。
 さらに、伝染病や自然災害など鶏群を縮小せざるを得ない事象や、それに伴う飼料の供給停止などに係る契約生産者の鶏肉企業への不服申し立ての権利も付与するなど、USDA/AMSは鶏肉企業と契約生産者との間の偏った力関係の是正に踏み切った形である。
 なお、2022年6月に公表された規則案からの大きな変更点として、今般追加された情報開示の対象から明確に七面鳥が外れたこと、情報開示の期限を明確化したことなどが挙げられる。
図 鶏肉企業に義務付けられた情報開示の主な内容

3 業界の反応

 肉用鶏・鶏肉業界の反応は鶏肉企業側と肉用鶏生産者側で意見が割れた。
 鶏肉企業を主な会員とする全米鶏肉協議会(NCC)は、記録的なインフレ、飼料コストの上昇、サプライチェーンの混乱、地政学的事柄などもある中で、さらなるコストを義務付けることは無謀であり、業界関係者だけでなく消費者も苦しめることにつながるものであると強く批判した。
 一方で、生産者を主な会員とする全米農業者連合(NFU)や全米持続的農業連合会(NSAC)は、あまりにも長い間、生産者は不公正な契約システムに耐えてきたが、最終規則によって鶏肉企業は誠実な取引を義務付けられることにより、契約システムの透明性をもたらすものであると称賛した。
【調査情報部 令和5年11月21日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部)
Tel:03-3583-9533