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伊下院、「培養肉」などの細胞性食品の製造・販売禁止法案を承認(EU)

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 イタリア議会下院は11月16日、いわゆる「培養肉」などの細胞性食品(生物の細胞をその生物の体外で人為的に培養して得られた食品)の製造・販売を禁止する法案を承認した(注1)。法案の成立を推進した同国のロロブリジーダ農相は、「食糧安全保障やイタリアの伝統的な食文化、生産者、消費者を守る必要がある」として法案成立の重要性を訴えた。また「EUの中で細胞性食品の製造・販売を禁止した最初の国であることを誇りに思う」と述べた。
下院での承認に先立ち同農相は、「3000の政党代表者や地方自治体の代表者が(この法案を)支持し、200万人以上の署名を集めている」として、多くの支持を得て本法案の提出に至ったことを強調していた。
 この法案では、同国内での細胞性食品の製造・販売禁止のほか、植物由来の代替肉に「ステーキ」や「ハンバーガー」といった肉関連用語の使用および販売も禁止している。
 (注1)イタリアではこれまでも、同法案について検討してきている。「伊政府、いわゆる「培養肉」などの細胞性食品の製造などを禁止する法案を検討(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003506.html)も参照されたい。

 イタリア国内の農業団体からは本法案の承認を支持する声が上がっている一方、現地動物愛護団体からは、現在、EUで食用として認可された培養肉がないことから、「この法律は無意味である」と批判の声が出ている。また、植物ベースの代替タンパク質(代替肉)や細胞性食品の生産を支持するNGO団体グッドフードインスティテュートヨーロッパ(GFI Europe)は、植物性食品は環境への負荷が少なく、持続可能な食料生産が可能であるとしたうえで、この法案は消費者の選択肢を奪うだけではなく、急成長する細胞性食品産業の投資と雇用創出からイタリアを孤立させると懸念を表明した。
 
 培養肉の製造・販売をめぐっては、米国やシンガポールで認可が進んでいるほか、オランダでも7月に一定の条件下で培養肉の試食許可について合意が発表されるなど、EU域内でも代替肉などの開発が進んでおり、その市場規模は全世界で2035年までに20億米ドル(3010億2000万円:1米ドル=150.51円(注2))近くに上るという試算もある。
ロロブリジーダ農相は、細胞性食品のような従来とは異なる食料生産技術は十分な試験がなされていないと主張し、「今回の法案承認を受けて、ヨーロッパ全土に同様の動きが広まることを望んでいる」と述べた。
 (注2)三菱UFJ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年10月末TTS相場。
【藤岡 洋太 令和5年11月29日発】
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