米国農務省、オーガニック畜産物に係る基準を改正する最終規則を公表(米国)
米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)は11月2日、オーガニック家畜および家きんに関する基準(OLPS:Organic Livestock and Poultry Standards)を改正した最終規則を公表し、同月16日に開催したウェビナーにおいて、その内容の説明を行った。2022年8月に規則案の策定・公表、同年10月までのパブリックコメントの実施を経て、今般、最終規則を制定・公表するに至ったものである
(注)。
今回の改正は、オーガニック畜産物の生産過程におけるアニマルウェルフェア(AW)への取り組みを明確化・統一化することで、生産者・関係企業の競争条件の平準化と消費者にとって透明性のあるオーガニック畜産物の供給を図ることが目的とされる。
(注)詳細は「【 海外情報】米農務省、オーガニック畜産物に係る基準の改正案を発表(米国)(令和4年8月31日発)」を参照されたい。
米農務省、オーガニック畜産物に係る基準の改正案を発表(米国)|農畜産業振興機構 (alic.go.jp)
1 最終規則の主な内容
(1)ほ乳類などの家畜の主な飼養要件
最終規則では、家畜と家きんの飼養要件を分けて規定がなされた。これは家畜と家きんの飼養方法が明確に異なるためであるとしている。牛や豚を主とした家畜については、家畜が自然体で快適な行動をとれる飼養スペースに係る要件を明確化したほか、ストール式畜舎の使用、屋外へのアクセス、乳用子牛・母豚・子豚の個別飼養などに関する要件を追加した(表1)。なお、パブリックコメントを受け、これらの要件の対象にオーガニック蜂蜜を生産するミツバチなども含めることとされた。
(2)家きんの飼養要件
これまでは家きんにも他の家畜の飼養要件が適用されてきたが、最終規則では家きんの飼養要件について新たに項目を立てて規定するなど、劣悪になりやすい家きんの飼養環境も踏まえ、他の家畜と比較してより具体化した形である。
具体的には、すべての家きんが快適な行動をとれる飼養スペース、鳥類の本能行動を制限しないための設備の提供、アンモニア濃度の低減措置、人工照明の照射時間といった屋内飼養施設や飼養環境のほか、屋外へのアクセスや土の面積といった屋外における飼養環境について規定された(表2)。特に、鶏については、鶏舎のタイプおよび種類ごとに飼養密度を規定するなど定量的な要件が示された。
(3)家畜・家きんの輸送・と畜に関する要件
最終規則では、オーガニック畜産物に高水準なAWが配慮されたものであることを消費者に保証するため、輸送・と畜の段階におけるAWについて新たに項目を立て、家畜・家きんの取り扱いについて改めて整理し、一部要件を追加する形で規定した。
具体的には、輸送に関しては、生まれたての子牛や歩行困難な家畜・家きんの輸送の禁止、輸送時の気温・換気、長時間輸送時の水と飼料の給与などの要件が規定され(表5)、と畜に関しては、人道的な取り扱いとと畜方法を順守すること、必要に応じて是正措置を行うこと、脚に怪我を負った家きんを吊るすことの禁止などが規定された(表6)。
USDA/AMSは、食肉・食鳥処理・加工施設における家畜・家きんの取り扱いとと畜に関して、あくまでも既存の法律および規制に準拠することを要求しており、生産性を低下させるような過度な負担を強いるものではないと説明している。
2 最終規則の施行日と猶予期間
最終規則は2024年1月に施行されるが、1年間の準備期間が設けられ、25年1月までに要件を順守することが求められている。
しかし、家きんに関する要件のうち、「屋内外の飼養密度」「屋外へのアクセスのための出入口」「屋外の飼養設備」に係る要件については、5年間の準備期間が設けられ29年1月までに要件を順守することとされた。
これらの期限は今後新たにオーガニック認証を取得する事業者にも同様に適用される。
【調査情報部 令和5年12月8日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部国際調査グループ)
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