カナダ農業•農産食品省(AAFC)は10月27日、干ばつが深刻化する西部アルバータ州の肉牛生産者に対し、最大1億6500カナダドル(181億1865万円:1カナダドル=109.81円
(注1))からなる支援策を実施すると公表した。
AAFCによると、カナダでは肉用牛生産地域であるアルバータ州やサスカチュワン州などの西部地域を中心に干ばつが深刻化し、11月末時点で72%が異常な乾燥状態もしくは干ばつにあると評価されている(図)。これにより、一部では放牧環境の悪化に伴う飼料供給不足から、生産者は繁殖雌牛の
淘汰や早期出荷を余儀なくされている。こうした状況を受けてカナダ政府は、早期出荷した生産者に対して販売収入の一部を課税対象として翌年度まで繰り延べることを認める畜産課税猶予措置
(注2)などを適用してきた。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年11月末TTS相場。
(注2)カナダ政府による畜産生産者に対しての畜産課税猶予措置については、カナダ政府、干ばつなどの被害で畜産業者への課税猶予措置を適用(カナダ)|農畜産業振興機構 (alic.go.jp)を参照されたい。
今回の支援策は、繁殖雌牛の放牧飼育を21日間以上削減して、他の飼育手段に変更せざるを得なかった生産者などを対象に給付を行うものとなっている。給付額は1頭当たり150カナダドル(1万6472円)を上限に、干ばつによる放牧環境の悪化などを背景に、繁殖雌牛の放牧日数損失により発生した粗飼料費のコスト上昇分に基づいて算定される。交付申請は生産者自らオンライン上で行い、申請受付期間は10月30日から翌年24年1月15日までとなっている。
今回の支援策についてアルバータ州のスミス首相は、アルバータ州の畜産業は同州のみならずカナダ全体の経済にとっても重要であるとした上で、「ここ数年は干ばつの影響など多くの生産者にとって厳しい年が続いており、今回の支援策は生産者の経済的安定を保証するものである」と述べた。