オランダの乳業最大手であり協同組合系のフリースランド・カンピーナ社は2023年12月12日、コスト削減と収益確保の一環として、今後2年間で1800人超の人員削減を行うと発表した。同社は、23年上半期の純利益が94%以上落ち込んだことを踏まえて、10月に事業全体のコスト削減計画を発表していた。この計画の中で、26年から年間4〜5億ユーロ(652億400万〜815億500万円:1ユーロ=163.01円
(注1))のコスト削減を検討しているとしていた。
同社は22年6月にドイツの乳製品部門を同国のミュラー社に売却したほか、23年2月にはバターの生産効率化のためにオランダ国内の生産拠点の集約化を発表していた
(注2)。
(注1)三菱UFJ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年11月末TTS相場。
(注2)海外情報「フリースランド・カンピーナ社、バター生産拠点を集約化(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003465.html)を参照されたい。
今回の人員削減の対象は31カ国の同社拠点のほぼ全てに及び、24年中に約1200人を解雇する予定としており、これにより、26年までに1億8000万〜2億ユーロ(293億4180万〜326億200万円)のコスト削減ができるとされている。
同社カルネベークCEOは、「組織のコスト構造を見直し、構造的にコストを削減するための困難な発表である」と述べ、関係者に与える影響が大きいことを理解したうえで、同社が市場で勝ち抜くために必要な措置であることを強調した。
同社は、牛乳や乳製品を100カ国以上で販売しており、オランダの農協系金融機関ラボバンクが22年に発表した世界主要乳業の売上高ランキング
(注3)では、世界第7位である。22年時点で、約2万2000人の従業員を擁し、売上高は140億ユーロ(2兆2821億円)であった。
同社の23年上半期の報告によると、インフレによる消費者の購買力低下や国際的な乳製品価格の急激な下落による収益性の悪化が、純利益の大幅な減少につながったとされている。
(注3)海外情報「ラボバンク、世界の乳業ランキングトップ20(2022年)を公表(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003597.html)を参照されたい。
また、オランダ、ベルギー、ドイツの酪農生産者約1万5000戸が同社の組合員となっているが、業績の悪化と今回の人員削減に伴う一時的な経費の発生により、組合員に対する23年以降の追加支払い
(注4)を行なわないことも併せて発表された。
(注4)21年には生乳100キログラム当たり0.14ユーロ(23円)、22年には同0.9ユーロ(147円)が組合員に支払われた。