英国農業・園芸開発委員会(AHDB)(注1)は12月15日、所掌する牛・羊部門、豚部門、酪農部門および穀物・油糧種子部門の4部門の賦課金について、徴収単価の引き上げを英国環境・食料・農村地域省(DEFRA)および地域政府に申請したと公表した。
(注1)英国の法律に基づき農場経営者(牛・羊、豚、酪農、穀物・油糧種子の4部門)および食肉処理業者等から徴収する賦課金を原資として設立された団体であり、活動経費はこれら賦課金などにより賄われている。
AHDBは、2023年10月から「Funding your Future(あなたの未来に投資する)」キャンペーンを通じ、対象となる農場経営者等に対して賦課金単価の引き上げを周知し、話し合いを継続してきた。中でも引き上げ率が33.3%と最も高い酪農部門からは、引き上げ率の妥当性に関する質問が相次いでいた。これに関しAHDBは、(1)酪農部門の賦課金支払者からは、既存の活動の中でも特にマーケティング、輸出および風評被害対策に対し、より力を入れるよう求められていること(2)賦課金は20年以上も上がっておらず、この間の物価上昇の影響もあり業界を支える力が年々低下していること(3)英国本島の平均的酪農家(年間165万リットルを生産)の賦課金引き上げによる負担額は年間330ポンド(6万2977円:1ポンド=190.84円(注2))程度であること−などを説明し、十分な支持を得てきたとしている。
(注2)三菱UFJ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年11月末TTS相場。
今回の賦課金単価の引き上げについてAHDBのジャクソン企画調整本部長は、20年以上も賦課金単価が据え置かれた部門もある中で、物価上昇や賦課金を付加価値税(VAT)の対象外とする決定(注3)などにより、業界を支える力が大幅に低下したことを理由に挙げている。今回の申請に際し同本部長は、「今回の賦課金単価の引き上げ申請は、4部門の各業界関係者の支持を得て初めて可能となった。このようなことができることを嬉しく思う」として、関係者の協力に感謝を伝えた。
今後、DEFRAおよび地域政府で申請内容が審査され、2024年の3月までには可否が判断される予定であり、申請が認められた場合、同年4月から賦課金単価が引き上げられる(表)。
(注3)英国の歳入関税庁(HMRC)は2022年3月、同年4月1日以降のAHDBによる賦課金をVATの課税対象外と決定した。