米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の紛争解決パネル(以下「パネル」という)は2023年11月24日、カナダが乳製品輸入に設定している関税割当制度の運用に関する調査報告書を公表した。これによると、パネルを構成する委員3名のうち、2名がカナダの運用は協定違反にあたらないと判断し、米国の訴えが却下された。本紛争では、米国通商代表部(USTR)が22年12月20日、USMCAに基づきカナダが乳製品輸入に設定している関税割当制度(TRQ)は、加工業者以外の業者や新規参入者のアクセスを依然として制限するものであり、USMCAに違反しているとして、パネルの設置を要求していた
(注)。
(注)これまでの経緯については「米通商代表部、カナダの乳製品関税割当について三度目の協議を要求(令和4年12月28日発)」を参照されたい。
カナダにとって米国は、乳製品輸入量の6割以上を占める最大の輸入先であり、22年の輸入量は17万6651トンとなっている(表)。品目別に見ると、牛乳やホエイ、チーズ、バターが主であり、輸入量は19年から21年にかけて輸入量は増加し続けていたが、22年には前年比で減少した(図)。このような中で、米国からカナダの乳製品市場へのアクセスがさらに拡大する契機となるのか、パネルの行方が注目されていた。