欧州委員会、砂糖の中期的需給見通しを公表(EU)
最終更新日:2023年12月28日
欧州委員会は2023年12月7日、EU農畜産物の中期的需給見通し(注1)を公表した。このうち、砂糖の需給見通しの概要について紹介する。
(注1)欧州委員会は、EU域内の農畜産物の数カ月程度の短期的需給見通し(年3回)と10数年程度の中期的需給見通し(年1回)を公表している。
相場の下落見通しから、てん菜の作付面積、生産量はともに減少見込み
2023年のEUのてん菜の作付面積は、直近の歴史的な砂糖相場の高騰(注2)を背景に148万ヘクタール(前年度比3.5%増)とやや増加が見込まれている(図1)。しかし、今後は相場が沈静化に向かうとの見通しから、徐々にてん菜から他作物への転作が進み、35年の作付面積は143万ヘクタールにまで減少すると予測されている。
また、てん菜の生産量は、作付面積の減少が見込まれる中で、近年の異常気象が今後も断続的に発生すると予測されることに加え、農薬の使用率縮小などが影響し、減少が見込まれている。ただし、見通し期間の対象となる23〜35年の後半には、ネオニコチノイド系農薬(注3)の代替製品が市場に出回ると見込まれることで、生産量の減少は緩やかになるとされている。
単収は、同様の傾向から前半は減少基調にあるものの、後半には、1ヘクタール当たり72トン程度で安定して推移すると見込まれている。
(注2)EUでは砂糖価格が高騰しており、2023年10月の工場渡し価格は1トン当たり841ユーロ(前年同月比43.5%高、13万7091円:1ユーロ=163.01円)となった。なお、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の11月末TTS相場を使用。
(注3)詳細については、2018年5月31日付海外情報「欧州委員会、3種類のネオニコチノイド系農薬の屋外での使用禁止を決定(EU)」https://alic.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002218.html、2023年2月7日付海外情報「ネオニコチノイド系農薬の緊急使用に否認の判決(EU)」https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003455.htmlを参考にされたい。
砂糖生産量は減少、消費者嗜好の変化から消費量も減少見込み
てん菜の減産に伴い、砂糖生産量も徐々に減少し、2035年には1520万トンと23年比で2.0%減のわずかな減少が見込まれている(表)。一方、この減産の一部は、異性化糖の増産で補われることから、23年には60万トン未満であった異性化糖の生産量は、35年には80万トンに増加すると見込まれている。ただし、異性化糖の需要は、食品需要の減少と他の甘味料との競争激化によって、増産は限定的とされている。
EUの砂糖消費量は長期に渡って緩やかに減少しており、これは主に消費者嗜好の変化から、砂糖を減らす食生活へと移行しているためとされる。特に砂糖含有量の多い製品を避ける傾向が続いており、今後もこの傾向が持続すると見込まれている。EUの人口減少率と1人当たりの砂糖消費量の減少率を勘案すると、EUの砂糖消費量は毎年0.7%ずつ減少し、35年には1540万トン(23年度比6.7%減)まで下落すると見込まれている。(図2)
輸入量の減少により、自給率は高まる
2023年現在、EUは砂糖の純輸入国である(図3)。しかし今後は、砂糖生産量を上回るペースで消費量の減少が予測されており、砂糖の輸入量は35年には90万トンまで半減すると見込まれている。また輸出は、主要輸出先(近東・中東・アフリカ北部など)との間で継続した取引が行われるとされ、輸出入の差の乖離は大きく縮小することが見込まれている。
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