中国向け乳製品、全品目の関税が撤廃(NZ)
ニュージーランド(NZ)政府のマクレイ貿易相は2024年1月1日、NZから中国に輸出されるすべての乳製品の関税が、同日をもって撤廃されたことを発表した。これは、2008年10月に発効された両国間の自由貿易協定に基づくものであり、今後、NZは中国向け乳製品に関し、制約のない自由な貿易を享受することになる。
同協定では、中国はバスケット(注1)1〜4の乳製品について、発効1年目から段階的に枠内税率を引き下げるとともに、バスケットごとに設定される特別セーフガード(SSG)の発動基準数量を拡大してきた(表)。
(注1) いくつかの乳製品をまとめて、4つのカテゴリー(バスケット)が設定されている。バスケット1は飲用乳およびクリーム、バスケット2は全粉乳、脱脂粉乳および無糖れん乳、バスケット3はバターおよびバターオイル、バスケット4はチーズから構成される。
このうち、バスケット1、3、4の乳製品については、17年に関税が撤廃され、22年にSSG措置の適用外となっている
(注2)。
(注2) 詳細は、海外情報「NZからの一部乳製品輸入、2022年から無制限に無税に(中国)」を参照されたい。
一方、全粉乳や脱脂粉乳などで構成されるバスケット2は、19年に関税が撤廃されたが、23年末までSSG措置の適用対象であったため、発動基準数量を超えた場合には、10%(最恵国税率)の関税が適用されてきた。
実際、バスケット2の乳製品は、毎年、発動基準数量を大きく超える量が中国に輸出されており、23年の輸出量は53万7000トンと同年の発動基準数量(19万7498トン)を大きく上回った(図)。この結果、NZ乳業協会(DCANZ)の試算によると、同年1〜9月までの期間で約2億米ドル(286億円、1米ドル=142.83円(注3))の関税が課されたとされている。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年12月末TTS相場。
今般、バスケット2に適用されていたSSGが、両国間の自由貿易協定通り23年末をもって失効したことで、同協定における乳製品アクセスの最終自由化が果たされた。これにより、NZは豪州など他の輸出競合国に先駆けて、すべての乳製品を数量無制限かつ無税で中国に輸出できる市場アクセス権を手に入れた。
NZ政府のマクレイ貿易相は、「NZの酪農部門にとって朗報であり、今回の関税撤廃により、年間約3億5000万NZドル(322億円:1NZドル=91.91円(注3))の関税削減が見込まれる」とコメントし、「同協定は引き続きNZに利益をもたらし、中国との貿易関係を支える」と述べた。
【工藤 理帆 令和6年1月29日発】
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