ドイツの農業用ディーゼル燃料減税措置廃止に対し生産者が大規模デモ(EU)
ドイツの首都ベルリンで2024年1月15日、連邦政府が発表した農業用ディーゼル燃料に対する減税措置の段階的な廃止に抗議する生産者の大規模なデモが実施された。このデモを主導したドイツ農民連盟(DBV)は、約3万人の生産者が参加したと発表した。
今回のデモに先立つ1月8日、同国全土において高速道路を農業用トラクターで封鎖するなどの抗議が行われた。DBVによると、12日までの5日間で10万台以上のトラクターが参加し、国内のほとんどの生産者が何らかの形で抗議活動に参加したとされている。
また、同12日には33の農畜業・食品業界や運送業界の団体が共同声明を発表し、連邦政府が農業・食品関連産業に対してこれ以上のコスト負担を強いることがないよう求めた。
ディーゼル燃料の減税措置廃止をめぐる動き
ドイツにおける農業用ディーゼル燃料の減税措置は1951年から続いており、現在の減税額は1000リットル当たり214.80ユーロ(3万4072円:1ユーロ=158.62円(注1))となっている(注2)。この減税措置をめぐっては、新型コロナウイルス感染症対策予算を農業用ディ―ゼル燃料税等を原資とする気候変動基金に転用するとした連邦政府の措置を無効とする司法判断が下ったことで、同基金の予算削減の一環として、連邦政府が23年12月13日、農業用ディーゼル燃料の減税措置と農業用車両の自動車税の免除を廃止する計画を発表していた。
この計画に対して、国内の農業団体などからは反対の声明が発表され、同18日にベルリンなどで農業用トラクターによる大規模な抗議活動が行われた。
同計画には、政府内部からも激しい批判が出ており、オズデミル農相は「ディーゼル燃料の減税措置と自動車税免除の廃止により、ドイツの農業生産者が過度な負担を強いられることになる」と述べ、「農業用燃料を環境に優しい燃料に代替するのは簡単ではない」と主張した。
大規模な抗議活動を受けて連邦政府は24年1月4日、(1)農業用ディーゼル燃料の減税措置を3年間にわたり段階的に廃止(注3)し、(2)農業用車両の自動車税免除は維持する、とした計画の見直しを発表した。この発表の中でオズデミル農相は「ここ数日の集中的な議論の中で、この計画が農業部門に及ぼす悪影響を指摘し、農業への不釣り合いな負担を回避する解決策を見出すことができた」と述べた。
一方、農業団体などは、あくまでも農業用ディーゼル燃料の減税措置を維持することを求めるとして、上述のデモによる抗議活動を行っている。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2023年12月末TTS相場。
(注2)ドイツにおけるディーゼル燃料の税込み価格は1000リットル当たり1714.00ユーロ(27万1875円。24年1月15日時点。連邦経済エネルギー省公表データより。)
(注3)農業用ディーゼル燃料の減税措置を24年内に40%、25年と26年にそれぞれ30%減額し、26年をもって打ち切る方針を掲げた。
抗議活動後の動き
2024年1月15日に行われたデモでは、会場となったブランデンブルク門でリンドナー財務相が登壇し、「連邦予算からの支援はこれ以上約束できない」と述べ、農業関係者への理解を求めたものの、デモ参加者からは抗議の声が殺到した。また、同日に農業団体の代表と連邦政府議会の代表による協議がなされたものの、農業用ディーゼル燃料の減税措置については合意に至らなかった。
同18日には、連邦議会の予算委員会において、農業用ディーゼル燃料の減税措置の段階的な廃止を含む24年の予算案が承認された。これを受けて、DBVのルクヴィード会長は「農業用ディーゼル燃料に関する適切な解決策を求めて闘い続ける」とし、全国的な抗議活動を継続することを表明した。
【藤岡 洋太 令和6年1月30日発】
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