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ウクライナ産穀物の輸出、増加基調

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23年12月のウクライナの穀物輸出量、黒海穀物イニシアティブ時に迫る

 ウクライナ農業政策食料省は2024年1月15日、同国産穀物の輸出状況を更新した。これによると、23年7月17日のロシアの離脱による黒海穀物イニシアティブ(注1)の終了(注2)を受け、トウモロコシ、小麦、大麦の輸出量は、23年7月は229万トン(前月比38.1%減)、8月は225万トン(同2.0%減)、そして9月は202万トン(同10.1%減)と減少した。しかし、その後は増加基調に転じて12月には521万トン(同43.1%増)と黒海穀物イニシアティブにより輸出していた量に迫る水準になった(図1)。このうち船舶による輸出は、476万トン(同52.1%増)となり、同月輸出量の91.3%を占めた。
 現地報道によると、この穀物輸出量の回復は23年8月10日にウクライナが黒海上に開設した臨時穀物回廊によるものとされ、その経路は黒海のオデーサ等を出発港とし、ウクライナ海軍の案内でウクライナとNATO加盟国のルーマニアおよびブルガリア両国の海岸線を航行し、トルコのボスポラス海峡に到達するものとなる(図2)。黒海の港は水深が深くパナマックス船も入港できるため、代替ルートとして検討されている陸路を使ってルーマニアとの国境になっているドナウ川を経由して黒海に抜けるルートに比べはるかに効率的であり、また、黒海穀物イニシアティブでは、ボスポラス海峡において輸出船の追加検査が行われていたが、ウクライナによる臨時穀物回廊では同検査をしなくても済む。穀物輸出量の取り扱いは、チョルノモルスク港が最も多く、次いでオデーサ港、イズニー港とされている。
 
(注1)22年7月22日、ウクライナとロシアは国連とトルコの仲介の下、ウクライナのオデーサ港(近港のチョルノモルスク港とイズニー港を含む)からの穀物と肥料の安全な輸出航路の確保に関する「黒海穀物イニシアティブ」に署名し、これに基づき輸出を共同で進める共同調整センターを設置した。
(注2)海外情報「ウクライナ産農畜産物の輸出動向〜黒海穀物イニシアティブの停止〜」をご参照ください。
図1
図2

23年8〜11月のウクライナ産トウモロコシ輸出は大幅減

 黒海穀物イニシアティブの終了後の2023年8〜11月のウクライナのトウモロコシの輸出量は、502万6000トン(前年同期比40.2%減)と前年同期を大幅に下回った(表)。これは、安価なウクライナ産穀物の陸路による流入に苦慮する近隣5カ国(ポーランド、ハンガリー、スロバキア、ルーマニアおよびブルガリア)からの要請を受け、欧州委員会がウクライナからの農産物の一部の陸路による輸入を一時停止(注3)したことなどによるものである。このため、これに代わる輸出手段として、船舶による輸出が増加している。
 同期間のトウモロコシ輸出量を輸出先別に見ると、近隣5カ国向けが大幅に減少する中で、船舶による輸送の効果もあり、スペイン(同55.0%増)、エジプト(同90.1%増)、ポルトガル向け(同121.4%増)が前年同期を大幅に上回った。また、中国向け(同23.2%減)は前年同期を下回ったが、これは黒海穀物イニシアティブの終了による同年9月と10月の減少によるものであり、11月は33万1000トン(前年同月比7.8%増)と前年同月を上回っている。

 (注3)海外情報「欧州委員会、ウクライナからの一部農産物の輸入を一時停止(EU)」をご参照ください。
表

23/24年度のウクライナ産トウモロコシは生産増、輸出減の見込み

 米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)および米国農務省海外農業局(USDA/FAS)が2024年1月12日に公表した2023/24年度の世界のトウモロコシ需給予測(注4)によると、同年度のウクライナのトウモロコシ生産量は3050万トン(前年度比13.0%増、世界の生産量の2.5%)、輸出量は2100万トン(同22.6%減、世界の輸出量の10.5%)と見込まれている。
 
(注4)トウモロコシ需給予測について詳細は、海外情報「米国農務省による世界および米国のトウモロコシ需給予測(2024年1月)」をご参照ください。
【渡辺淳一 令和6年2月7日発】
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