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EUとチリがFTAに関する新協定に署名(EU)

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 欧州委員会は2023年12月13日、03年2月に発効し20年が経過したチリとのFTAについて、二国間の関係をより強化し、近代化するために改正する協定に署名したことを発表した。同FTAについては、22年12月に改正することが合意されていた(注1)
 
(注1)海外情報「欧州委員会、EU・チリFTAを包括的な協定に改定することに合意(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003430.html)を参照されたい。
 
 欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は同日付で声明を発出し、(1)今回署名した協定によってEUからチリへの輸出品目の99.9%の関税が免除されること、(2)EUのクリーンテック産業にとって重要な原材料のサプライチェーンの構築のため相互に協力すること、(3)人権や環境保護といった価値観について両国で共有されることを例に挙げ、同協定の署名に歓迎の意を示した。
 今回の協定は、(1)民主主義や人権などの価値観の共有、各分野の政府間協力などを定めた先進的枠組み合意(AFA)と、(2)関税の撤廃、チリにおけるEUの投資家やサービス提供企業の待遇改善などを定めた暫定的貿易協定(iFTA)の2つに分かれている。前者については欧州議会や欧州理事会の承認の後、各加盟国議会による批准を得る必要があり、後者については欧州議会や欧州理事会の承認後、直ちに発効される予定である。
 22年12月に欧州委員会から発表された新協定案によれば、農産物についてはEU側が食肉などで関税割当数量を拡大する一方、チリ側は最長7年かけてバターや粉乳、チーズの関税および関税割当数量を撤廃するとされていた。また、チーズを含む216の製品が地理的表示保護制度(GI)によって保護されるとされた。

米国乳業界の懸念

 今回の署名について欧州の農業団体からは、12月末時点で声明などは発表されていないが、1年前の合意時に寄せられた乳製品団体からの期待感は引き続き高いとみられる。
 一方、米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は新協定の影響について、23年11月および12月のレポートの中で、AFAで定められたGIにより、チーズ名称の使用が規制される点に懸念を表明している。
 同レポートによると、EUの貿易協定で、GIについて広範な保護が盛り込まれるのは今回が初めてとしている。例えば、EUとカナダやシンガポールとのFTA協定では、「パルミジャーノ・レッジャーノ」という名称は保護されていても、「パルメザン」という名称を使用することは認められていた。一方、今回署名されたチリとの協定の下では、生産または輸入企業に例外扱いが認められない限り、「パルメザン」の名称を使用して販売することはできない。
 USDAは、この協定が批准されれば、チリ国内の市場で米国産乳製品の販売が制限される一方、EUの乳製品輸出企業に対して独占的な利益を与えることになり、同国の消費者利益を棄損すると非難している。
 22年のチリの乳製品輸入先は、1位はアルゼンチン(輸入額8400万ドル(135億6348万円:1ドル=161.47円(注2)))、2位は米国(同6300万ドル(101億7261万円))、3位はEU(同5670万ドル(91億5535万円))であった。USDAは、米国からの乳製品輸入額のうちパルメザンチーズはその2割を占める1350万ドル(21億7985万円)であったと推計している。
 また、同レポートによれば、今回の協定は24年1月にも批准される可能性があるとし、USDAは米国の乳製品輸出企業に対して24年以降チリに輸出する商品に関し、現行の名称やラベルでの販売が可能か、チリの販売者に確認するように呼び掛けている。
 
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」2024年1月末TTS相場。
【調査情報部 令和6年2月16日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4397