米国農務省、牛肉用遠隔格付けシステムの試験的運用を開始(米国)
米国農務省(USDA)は1月19日、現行の肉質等級および歩留まり等級の格付けサービスについて、遠隔での評価によって実施可能とする「牛肉用遠隔格付けシステム」の試験的運用を開始することを発表した。同月25日にはウェビナーで説明会を開催し、当該システムの利用を促した。
1 現行の牛肉格付けサービス
米国では任意で受けられる牛肉格付けサービスがある。米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)が定める牛肉格付制度に基づき、牛の成熟度と脂肪交雑によって「肉質等級」を評価し、小売販売可能となる肉の量の割合を推計することによって「歩留等級」を評価する。そして、「肉質等級」はプライムからキャナーまでの八つ、「歩留等級」はY1からY5の五つの等級に分類される(図1、表1)。
2021年における牛肉格付け等級別の割合は、プライム等級が10.6%、チョイス等級が74.5%、セレクト等級以下の等級が14.9%であり、近年徐々にプライム等級およびチョイス等級が増加傾向にある(図2)。
USDA/AMSの報告によると、21年の牛肉生産量のうち80.4%がUSDAの格付けサービスを利用しており、去勢牛および未経産牛に限定すると95.0%が利用している。
直近のUSDA/AMSの報告によると、等級別の枝肉価格はプライム等級が100ポンド当たり290.95米ドル(1キログラム当たり953円:1米ドル=148.55円(注))、チョイス等級が同278.82米ドル(同913円)、セレクト等級が同264.24米ドル(同865円)となっている。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年1月末TTS相場。
2 牛肉用遠隔格付けシステムの試験的運用
現行の格付けサービスは牛肉に価値を付与するものであるが、これを利用するためにはUSDAの格付け担当官の駐在時間に応じた旅費やサービス利用料を支払う必要がある(表2)。毎日数頭〜数十頭程度のと畜・処理を行うような小規模な食肉処理・加工施設などでは、旅費や利用料に対する費用対効果が障壁となり、導入が進んでいない。
このためUSDAは、2023年半ばから事前調査を行うために20の小規模食肉処理・加工施設の協力の下、毎週1〜15頭の遠隔格付けを行い、今般、その結果を踏まえて試験的運用を開始した。この試験的運用によって得られる情報を基に、システムのさらなる改良、実態に見合った費用の確認、システム維持と適切な運用に要する監視体制の水準を見極めるとしている。
本遠隔格付けシステムでは、研修を受けた食肉処理・加工施設の従業員がスマートフォンと専用機材を用いてロース芯(リブアイ)部分を撮影し、USDAの格付け担当官にメール送付することで「肉質等級」および「歩留等級」の評価が行われる。
本システムの利用に要する費用は、初回訪問が1500〜2500米ドル(22万2825円〜37万1375円)、格付け評価費用が依頼に応じて1回当たり114〜1000米ドル(1万6934円〜14万8550円)、記録確認費用が年間228〜1500米ドル(3万3869円〜22万2825円)、監視訪問が1回当たり1500〜2500米ドル(22万2825円〜37万1375円)に見込んでいる(表3)。
本システムは肉用牛・牛肉業界からも好評を得ている。全米肉用牛生産者・牛肉協会(NCBA)は「本システムは、消費者に分かりやすく肉質を伝えることができる現行サービスを地方の小規模食肉処理・加工施設に利用しやすくするものであり、このような施設に牛を出荷している肉用牛生産者にとっても利益をもたらすものである」と歓迎した。
【調査情報部 令和6年2月20日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部国際調査グループ)
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