タイ通商代表は、バイデン政権が農村部の振興のために大規模農家だけではなく中小規模農家にも市場機会の提供を重視していることに触れつつ、農畜産物輸出が地域社会に貢献するものであるとして、これまで同政権が取り組んできた貿易政策の成果を紹介した。
米国通商代表部(USTR)と米国農務省(USDA)が連携し、農畜産物の輸出促進を農家の収益につなげるべく、農家や輸出事業者が公平な条件下で競争できるように取り組んできたとした。また、直近3年間で農畜産物輸出量が最高水準に達するとともに、農業収入も記録的な水準に達したことに触れ、農畜産物の海外市場の開拓が生産者の収益に貢献するものであるとした。
同通商代表は、既存の海外市場へのさらなる開拓の例として、日本およびインドとの貿易について紹介した。日本との貿易に関しては、2023年1月、米国産牛肉に対するセーフガード措置の適用条件の修正などを定めた日米貿易協定改正議定書
(注1)が発効したことにより、日本における米国産牛肉の需要により確実に応えることが可能になったとした。また、日本に対しては、米国産トウモロコシなどを用いたバイオ燃料の輸出拡大に取り組んでいることも紹介した。
(注1)2022年3月に二国間で実質合意され、同年6月に署名された。
インドについては、ピーカンの関税70%引き下げ、アーモンド、リンゴ、ひよこ豆、レンズ豆およびクルミなどの製品に対する関税撤廃の実現、冷凍七面鳥肉および冷凍アヒル肉などの関税削減の取り決めに至ったことを紹介した。
さらに、新たな海外市場への開拓の例として、南アフリカによる米国産鶏肉・鶏肉製品の輸入規制の緩和について触れ、米国産鶏肉および一部の鶏肉製品の南アフリカ向け輸出が解禁されたことを紹介した。その他にも東南アジア、中東、アフリカの国々と新たな関係を構築しつつ交渉を続けていることにも言及した。
そして、既存の貿易協定の中で、米国が十分な恩恵を享受できるよう取り組むことも必要であるとして、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)下で生じている課題について触れた。同通商代表は、メキシコ政府による遺伝子組み換えトウモロコシの使用制限に関する規制について触れ、米国トウモロコシ農家とメキシコ畜産農家に深刻な経済的損害をもたらす恐れがあるだけでなく、気候変動と食料安全保障の課題に対応するための技術革新を阻害するものとした。23年8月に紛争解決パネルを設置し、両国間の協議は継続しているが、懸念を解決するために全力を尽くすとした。
また、カナダ政府が乳製品輸入に対して講じている関税割当制度(TRQ)の運用がUSMCAに違反しているとして紛争解決パネルを設置した結果、最終的に23年11月にカナダ政府のTRQはUSMCAに違反しないとの裁定が下され、米政府の主張が退けられたことにも言及した
(注2)。同通商代表は、この課題に対処すべくカナダ政府と協力を続けていくが、USMCAの適切な運用に必要なあらゆる手段を用いることも躊躇しないとした。
(注2)海外情報「カナダとの乳製品貿易紛争、米国の訴えを却下(米国・カナダ)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003674.html)を参照されたい。米政府は、カナダ政府が乳製品輸入に対して講じている関税割当制度(TRQ)の運用がUSMCAに違反し、米国産乳業メーカーの市場アクセスを不当に阻害しているとして、紛争解決パネルを設置してきた。22年1月には米政府の主張が認められ、同年5月にはカナダ政府が運用方針を示したものの、米政府は依然として問題が解決されていないとして再び紛争解決パネルを設置した。しかし、23年11月にカナダ政府のTRQはUSMCAに違反しないとの裁定が下され、米政府の主張が退けられた。