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生産者による抗議行動を受け、EU農相理事会が対案を発表(EU)

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 ベルギーのブリュッセル市内で2月26日、生産者による大規模な抗議行動が行われ、欧州委員会や欧州理事会前の大通りをトラクターやバリケードで封鎖し、抗議行動が繰り広げられた(写真1〜5)。
 同抗議行動は、同日に開催されたEU農相理事会に合わせて実施され、会合に出席した各国の農相と生産者代表との直接面談も行われた(写真6)。

欧州理事会および委員会などによる生産者への対応

 農相理事会開催後、生産者が直面している問題の緩和と解決のために支援を約束するとともに、今年に入って提案されていた次の対応案の実施を歓迎するとのプレスリリースを公表した。
(1)GAEC8(注1)で定める休耕義務の一時免除
 耕地の4%の休耕の代替として耕地の7%でのマメ科植物などの窒素固定作物の栽培や、主要作物栽培期間のはざまに窒素固定作物を播種し、家畜の飼料や緑肥とすることで、休耕義務を果たしたこととみなす。
(注1)加盟国が定義する「良好な農業環境要件(GAEC)」と呼ばれる環境保全などに関する条件で、直接支払いを受けるためにその遵守が求められている。畜産の情報「欧州グリーン・ディール下で進められる農業・畜産業に影響する各種政策」もご参照ください。
(2)F2F戦略(Farm to Fork strategy)で掲げた「2030 年までに化学農薬の使用とリスクを50%削減」する目標を、法的に裏付ける「農薬の持続可能な使用に関する規則(SUR)」の提案の撤回
(3)ウクライナからの輸入に対する自主貿易措置の延長(注2)に関し、家きん肉、卵、砂糖に関して設けられたセーフガードの措置
(注2)海外情報「欧州委員会がウクライナ産農畜産物に対する国境措置の停止措置延長を提案(EU)」をご参照ください。
 
 これらに加え、欧州委員会から2月22日に提案された次の内容についても賛意を表明した。
(4)永年牧草地の面積を基準年(2018年)以上に保つとしたGAEC1の運用を緩和し、基準年以降に畜産から穀物生産に移行した生産者の救済
(5)GAEC6に定める土壌保全(土壌の被覆)義務の緩和
(6)当局による衛星画像を利用した訪問回数の削減などによる行政手続きの緩和
 
 また、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は1月25日、次期共通農業政策に反映させるため、EUの農業および食品システムの将来についての共通の展望を、2024年夏までに策定することを目的とする戦略的対話の開始を発表した。

生産者団体による声明

 EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa-Cogeca)は2月23日、各加盟国の生産者団体と共同で声明を発出し、生産者による抗議行動に賛同するとし、(1)直接支払いの受給条件の緩和、(2)ウクライナへのセーフガード措置の対象に穀物などを含めること、(3)輸入農畜産物にもEU生産者と同じ条件を課すこと、(4)生産者が公正な報酬を受けられる措置を講ずること、などを要求している。

今年に入り多発する抗議行動の背景

 生産者の抗議行動に直接影響する要因の一つ、に、5年に1度行われる今年6月の欧州議会選挙が控えていることがある。現地報道によると、例えばフランスでは、国民の多くが生産者の主張に理解を示し、EUの存在が生産者にとって不利に働いているという意見に賛同している。このため、欧州議会の議員は生産者の声に敏感になっている。
 欧州議会の選挙は加盟国ごとに、加盟国独自の投票制度で行われるため、各国の政権に対する批判が反映されやすいとされる。このため、生産者の抗議行動の内容も国別に異なる傾向にあり、ドイツでは軽油に対する補助金の削減、東欧ではウクライナからの農産物の流入、フランスでは貿易協定や環境規制に対する抗議が目立つなど、違いが生じている。
 一方で、Copa-Cogecaの共同声明文にある通り、生産者や農業協同組合からの声はほとんど無視されてきたことに加え、農業分野を問題視し、欧州農畜産業の重要性が軽視されてきたという生産者の不満は各国に共通しており、それらがこの時期に噴出したものとみられている。
写真1
写真2
写真3
写真4
写真5
写真6
【調査情報部 令和6年3月1日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527