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輸入食品に対する新たな国境管理の運用を開始(英国)

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 英国政府は2024年1月31日、「国境目標運用モデル(BTOM:Border Target Operating Model)」と呼ばれる新たな国境管理措置について、同日から運用をEU加盟国に対して開始したことを発表した。 
 この措置の目的は、「単一貿易窓口(UK Single Trade Window)」により国境管理を簡素化、デジタル化する一方、最終的にEU加盟国および非EU諸国の両方に同じ輸入条件を課すことであり、段階的に食品などの輸入に対して実施される。
 BTOMの最初の措置として、同日から中リスクと分類された動物性製品、植物、植物性製品、高リスクの動物性でない食品・飼料をEUから英国に輸入する際には、衛生証明書や植物検疫証明書が必要とされた。ただし4月30日までは準備期間として、証明書の不備などがあっても輸入が差し止められることはなく、注意喚起を受けるだけの運用になる。また、低リスクと分類された植物および植物製品の事前届出義務が撤廃された。
 なお、高リスクに分類される畜産物は生きた動物、ミツバチ、有精卵など繁殖用途の製品であり、中リスクは飲用乳や温度管理の必要な乳製品、英国政府から認可された輸入先からの牛肉、豚肉、鶏肉、家庭消費用の卵、低リスクは、規則が認める方法で殺菌処理され常温で保存可能な乳製品や食肉製品となっている。ただし、ニュージーランド(NZ)産牛肉や、NZやカナダ産の温度管理が必要な乳製品も低リスクに分類されている。
 よって、4月30日以降はEUから英国への輸入に関して、中リスクと分類された製品に対する書類審査やリスク分析に基づく出荷者検査、実地検査が開始される。一方、非EU諸国から英国への輸入に関しては、中リスクと分類された動物製品に対する実地検査などの措置レベルが引き下げられ、低リスクと分類される動物性製品、植物、植物製品に対する衛生証明書添付義務と定期的な検査が廃止される。
 BTOMは24年10月31日から完全に実施され、EUから英国への輸入に対して、現状では非EU諸国にしか義務付けられていない宣誓書(Safety and Security declaration)の提出が課せられる。一方で同日から、EU以外の国のすべての関係者も単一貿易窓口を利用し、貿易の手続きを行うことが可能となる。
 英国政府はプレスリリースの中で、「貿易への悪影響を抑えつつ、高いバイオセキュリティ基準を維持することに役立つ」としている。
 
 一方、BTOMについて英国食肉加工協会(BMPA)は、同国の食肉供給量のうち牛肉の22%、羊肉の21%、豚肉の49%を輸入で賄っていることを挙げた上で、その大部分を輸入するEU加盟国での衛生証明書に署名する獣医師の不足に懸念を示している。特に週末や週明けは獣医師の確保が困難となる傾向が高いことで、食肉の処理や物流などの停滞、これに伴う追加コストの発生を指摘している。このため、4月30日からの実効性のある証明書検査が開始されるまでに、英国政府に対して適切な対策が取られることを要求している。
【調査情報部 令和6年3月15日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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