米国ばれいしょ業界、輸出拡大の重要性を主張（米国）

　全米ばれいしょ評議会（NPC）^（注1）は2月26日、米国産ばれいしょの輸出拡大による経済効果を分析した報告書を公表した。米国では、暑熱や干ばつの影響を受けて減少傾向にあったばれいしょの生産量は2023年に回復し、生産量および生産額ともに増加の見通しとされている（図1、2）。今回の報告書の公表は、輸出拡大を経済効果に結びつけることで、米国政府に対し貿易障壁への対応を訴えることが狙いであるとみられる。

注1：1948年に設立された全米ばれいしょ生産者を代表する団体。議会で議論される政策問題から連邦政府が提案する規制問題まで、ばれいしょ業界に影響を及ぼす問題に取り組むことで生産者の利益を守ることを目的とする。

　米国農務省経済調査局（USDA/ERS）によると、米国産ばれいしょの輸出額は、2020年から23年まで上昇傾向が続いている（図3）。20年の16億7500万米ドル（2540億4730万円：1米ドル＝151.67円^（注2））から23年には23億7800万米ドル（3606億7130万円）と、直近4年間で大きな伸びをみせている。

注2：三菱UFJリサーチ＆コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年2月末TTS相場。

　NPCの報告書では、重要な輸出製品として、生鮮、乾燥、冷凍およびチップスの4種を上げ、2022年7月から23年6月の輸出額を基に、それぞれの主要市場と新興市場を分析している（表1）。
　生鮮および乾燥ばれいしょの輸出額は、それぞれ3億1038万米ドル（470億7517万円）および2億5696万米ドル（389億7388万円）と冷凍ばれいしょに比べて小さい。しかし、輸出先上位のカナダ、メキシコ、日本は、重要な市場と位置付けられている。
　冷凍ばれいしょの輸出額は15億3040億米ドル（2321億1533万円）と他の製品と比べて圧倒的に大きい。日本、韓国、フィリピン、台湾向けが上位を占めるなど、アジアが主要市場とされている。
　チップスの輸出額は2億1903万米ドル（332億2044万円）程度である。カナダとメキシコ向けが主要輸出先であるが、アラブ首長国連邦（UAE）、カタール、サウジアラビア、クウェートなど湾岸諸国とその周辺地域からの需要も増加しており、無視できない市場としている。

　NPCは、米国産ばれいしょの貿易障壁として、関税、為替相場および植物検疫の3点を挙げた。輸出拡大のためには、関税削減や植物検疫に関する規制緩和などに向けた交渉、また、ドル高に負けないプロモーションの重要性を主張した（図4）。
 

　NPCは、貿易障壁などの課題を克服し、輸出を拡大した場合の米国内の経済効果を「未加工製品の輸出拡大」と「未加工製品および加工製品の輸出拡大」の二通りで推計した。
　まず、「未加工製品の輸出拡大」として、メキシコおよび日本向けの輸出額をそれぞれ1億米ドル（151億6700万円）増額することを想定して推計された。この場合、主に農業生産段階で、雇用3199人の創出、国内総生産（GDP）5億1900万米ドル（787億1673万円）の増加が見込まれるという（表2）。
　次に、「未加工製品および加工製品の輸出拡大」として、カナダ、日本および韓国向けの輸出額を10％増額するとともに、その他向けの輸出額を25％増額することを想定して推計された。この場合、特に、加工製品に関しては加工・卸売事業者への経済効果も大きくなる。農業生産段階と加工・卸売段階を合わせて、雇用2415人の創出、GDP5億500万米ドル（765億9335万円）の増額が見込まれるという（表3）。
　これらの二通りに同時に取り組んだ場合、労働者5614人の増加、年間総賃金支払額3億900万米ドル（591億5130万円）の増額、生産額10億2400万米ドル（1553億1010万円）の増額となるとしている。
　現在の米国産ばれいしょサプライチェーン全体で、雇用71万4504人、GDP1009億900万米ドル（15兆3049億円）と推計されているが、NPCは輸出拡大による経済効果は決して小さいものではないと主張した。