中国市場監督管理総局、2023年の市場取締り状況などを公表(中国)
最終更新日:2024年4月2日
中国では、3月15日の「世界消費者権利デー」に合わせて、毎年、消費者が市場で発見した不適切な商品や事業者をインターネット上で、または、政府の担当部署に告発することが定着している。市場の管理を担う中国市場監督管理総局(注1)も、この日に合わせて前年の「消費者からの苦情・通報の特徴」や、同局または各地方の市場監督管理部門による「権利侵害、ニセモノなどの取締り成果」などを公表してきた。
同局は今年も、同月11日から16日に掛けておよそ20の通知を公表した。このうち、食品の安全・品質管理に関連する3つの通知について紹介する。
(注1)同局の業務である市場の管理は、薬品、知的財産、食品安全などに関する権利侵害や違法な商品、サービスなどの取締りのほか、市場における公平な競争の確保など、市場の秩序を維持するために必要な行政行為全般にわたる。取締りや違法事業者への対応など法に基づく対応は、農村農業部を含む当該法の所管行政部門と連携して行われる。
「2023年消費者からの苦情・通報の8大特徴」(3月14日公表)
2023年、全国の市場監督管理部門が「12315」(苦情・通報専門の政府機関用の番号・窓口のこと)のインターネット、電話、FAX、窓口などを通じて消費者から受けた苦情、通報および相談は合計で3534万件に上り、前年比20.2%の増加となった。このうち苦情は1740万件、違法の疑いがあるとの通報・告発は507万件である(5年前の19年は、苦情が363万件、通報・告発は85万件であった。)
苦情の内訳を分野別に見ると、食品安全は3位(11.9%)の207万件であった(図1)。また、苦情・通報のうち虚偽公告に関するものは144万件あり、通報件数が多い商品の上位1、2、3位はそれぞれ、食品(30万件)、化粧品(15万件)、家庭用雑貨(14万件)であった(図2)。
23年の苦情・通報に関する「8大特徴」は、以下のとおりである。
(1) 苦情件数が急激に増加しており、中でも販売後のサービス(たとえば、配送時間が守られない、品質保証期間を過ぎた商品が配達されるなど)に関する件数が前年同様、最多であること。
(2) インターネット販売が引き続き増加しており、中でもライブ中継で商品を紹介、販売する形式の売り方についての苦情・通報件数が前年同様、最多であること。
(3) 新しい消費形態が登場しており、中でもAIや自動機能をうたう商品についての苦情・通報件数の伸び幅が大きいこと。
(4) 事業者が指定する約款に基づく契約トラブルの中でも、消費者側の責任を重くする条項や事業者を免責にする条項などが記載されている約款を巡るトラブルが増加していること。
(5) 虚偽の広告(商品の効能を実際の効能以上に高く宣伝する、「高評価を付けてくれたらプレゼントを贈る」などの方法で実際の価値以上の評価があるように見せかけるなど)が増加しており、消費者の知る権利を保護する必要があること(虚偽公告に関する苦情・通報件数144万件は、昨年比で1.7倍の伸びとなった)。
(6) 電気自動車など新型自動車に関する苦情・通報件数が激増していること(23年は14万件であり、19年に比べて6.5倍となった)。
(7) 「12315」プラットフォーム内に、17万社の企業が市場監督管理部門の支援を受けて紛争解決に向けた組織を設置しており、それにより584万件の紛争が解決されたという成果を上げたこと。
(8) 23年9月から全国の「12315」の情報が正式にオンラインで、かつ、一括で公表されるようになり、年末までのサイト訪問回数は200万回以上、また、企業に関する苦情・通報件数は109万社分、件数にして233万件と、同期間の件数のうち92.7%の公表率を達成したこと。
「2023年の権利侵害、ニセモノなどの取締り成果」(3月14日公表)
2023年の各種取締り活動で取り扱った件数は60万件近くに上り、そのうち、商標権および特許権の侵害案件はあわせて4万4100件であった。また、権利侵害・ニセモノの発見が多発している市場に対して実施した取締りは、およそ4万2000回であった。
「中央テレビ「3.15特別番組」で報じられた違法行為への対応」(3月16日公表)
国営放送である中央テレビ(CCTV)の「3.15特別番組」が報じた市場の問題を極めて重要視し、これらの事案について、中国市場監督管理総局は全国の市場監督管理部門と夜通し連携し、違法行為への速やかな対応を行った(注2)。
(注2)同通知には、具体的な問題事象として、7つの事案とその対応が列記されている。このうち四川省および北京市の市場監督管理部門による対応は飲食料品に関するもので、「听花酒」を製造販売する企業に対して、実店舗への立ち入り調査を行い、同ブランドの酒3万6225本、包装された箱約6万個などを差し押さえ、酒4本について証拠品として成分調査するためのサンプル調査を進めるとともに、小売り業者に対しては直ちに同ブランドの酒および関連商品の販売を停止するよう求めたと紹介されている。
現在、市場監督管理部門や公安部門などがこれらの企業に対して調査を実施している。今後、市場監督管理総局としては、「3.15特別番組」で明らかとなった違法行為に対して、各地の関係機関と協力し、「総局主導の集中的な取締り活動」、「消費者保護活動」および「肉類産品の違法行為処罰プロジェクト」などのプロジェクトを推し進めるとしている。さらに、行政処分と刑事処罰の密接な連携などあらゆる執行権限を活用し、消費者権益を侵害する行為を厳しく取り締まり、消費者の合法的な権利を確実に保護していくとしている。
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