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米国原産地表示の規則改正に関するカナダの反応(米国、カナダ)

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 米国農務省(USDA)は3月18日、食肉、家きん肉および家きん卵製品を対象とした米国原産地表示に関する規則を改正した(注1)。同改正に伴い「米国原産(Product of USA)」および「米国製造(Made in the USA)」との表示が可能な食肉製品は、2026年1月1日の規則適用以降、米国内で産出、飼養、と畜、加工された家畜に由来するものに限られることになる。これに対し、カナダ政府および同国の畜産業界はそれぞれ懸念の声明を発表した。
(注1)詳細は「【海外情報】米国農務省、米国原産表示に関する規則案を発表(米国)(令和5年4月24日発)」および「【海外情報】米国農務省、食肉などの米国原産地表示に関する規則を改正(米国)(令和6年4月8日発)」をご参照ください。
 

1 カナダ政府の反応

 マッコーリー農相およびエング国際貿易相は3月11日「高度に統合された北米の食肉・家畜サプライチェーンに混乱を引き起こす可能性のある措置について懸念を抱いている」との共同声明を発表した(注2)。カナダは、生体牛や生体豚を米国に輸出している(図)。これまでの規則では、米国で飼養、と畜、加工などが行われることにより、米国原産地表示を行うことが可能であったが、改正後の規則では、これらの製品に対する同様の表示ができなくなる。さらに、米国産の家畜との仕分けに伴うコストの発生といった影響が生じる可能性がある。今後の対応について同農相および同国際貿易相は「改正された規則を精査しており、米国の国際貿易上の義務に照らしてその影響と実施を注意深く監視し、カナダの食肉部門が米国市場へのアクセスを享受し続けられるようにする」と述べた。
(注2)USDAが3月11日に規則改正の最終案のプレスリリースを行い、これにあわせて同日以降、カナダ政府などが声明を発表した。
図 米国向け生体牛・生体豚輸出頭数の推移

2 カナダ畜産業界の反応

 カナダ肉用牛生産者協会(CCA)は3月11日、「生体牛の輸入に対する差別につながり、北米におけるサプライチェーンの統合を損なうことを懸念している」との声明を発表した。また、肉豚農家の全国組織であるカナダ豚肉協議会(CPC)も3月13日、「今回の改正は、かつてWTOで争われた義務的な原産地表示と同様、統合された米カナダ間の貿易に影響を及ぼすものであり、米カナダ双方の豚肉業界からのコメント(注3)が考慮されていないことに失望した」と懸念を表明した。翌14日には、カナダの食肉加工企業を会員とするカナダ食肉協議会(CMC)が「政府との緊密な連携を通じて、参入障壁の削減を引き続き提唱し、カナダの食肉産業が原産地表示によって制限されないようにする」との声明を発表した。
 米国は2008年、牛や豚の繁殖・肥育・と畜が行われた国の表示を義務付ける規則(mCOOL:Mandatory country-of-origin labeling)(注4)を施行したが、14年にWTO協定違反との裁定を受け、15年に米国議会によって廃止された経緯がある。今回の規則は任意的表示(vCOOL:Voluntary country-of-origin labeling)であるものの、CCAなどは「カナダは米国原産地表示への報復措置に関する当時の認可を保持しており、今回改正はWTOの裁定違反と判断される可能性がある」としている。
 (注3)全米豚肉生産者協議会(NPPC)は、2023年6月にUSDAに提出したコメントで、貿易相手国による提訴や報復関税措置のきっかけとなる可能性を指摘し、規則案の修正または廃止を求めていた。なお、今回の改正に際し、同団体から新たに声明などの発表は行われていない。
(注4)mCOOLについての詳細は「【海外情報】米国の義務的原産地表示(COOL)がWTO協定違反と裁定(米国)(平成26年10月22日発)」および「【海外情報】義務的原産地表示制度(COOL)から牛肉、豚肉の除外を決定(米国)(平成27年12月28日発)」をご参照ください。
【小林 大祐 令和6年4月10日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9533