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乳牛への鳥インフルエンザの感染事例が確認、公衆へのリスクは低い(米国)

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 米国農務省動植物検疫局(USDA/APHIS)は、3月25日から4月10日までの間に、テキサス州をはじめとする8つの州で、乳牛におけるH5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の感染が確認されたと公表している(図)。また、テキサス州では4月1日、この乳牛に直接接触した農場従業員での感染事例が確認された。連邦保健福祉省疾病予防センター(CDC)によると、この感染者の臨床症状は目の充血・結膜炎のみで既に回復しつつあり、一般的な公衆へのリスクは引き続き低いとされている。
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1 乳牛の感染確認の経緯および供給などへの影響

 USDAによると、3月25日にテキサス州およびカンザス州の酪農場で、泌乳量の低下や食欲減退を示す乳牛からHPAIが検出された。現地報道によれば、テキサス州の事例は原因不明の泌乳量の低下等がみられたことで調査が行われていたが、農場内に野鳥の死体が確認されたことから追加的な検査を実施したところ、HPAIの感染が確認された。発症していた乳牛からの生乳は非常に濃く、粘張性のあるゲル状で、乳房炎に()患している時と類似した症状がみられたとされる。
 米国の国家獣医学研究所(NVSL)が初期に行った解析によると、ヒトに対して伝播しやすくなるような変異は確認されなかったため、一般的な公衆へのリスクは引き続き低いとされている。
 これまでテキサス州(9件)以外にニューメキシコ州(4件)、カンザス州(3件)、ミシガン州(2件)、アイダホ州(1件)、オハイオ州(1件)、ノースカロライナ州(1件)およびサウスダコタ州(1件)で乳牛の群からHPAIが検出されたが、USDAは、牛が発症することによる生乳の廃棄量は非常に限られるため供給への影響はなく、牛乳やその他の乳製品の価格にも影響しないとしている。

2 現地の関係者の反応

 米国では、生乳は健康な乳牛からのみ出荷されることとなっており、また、牛乳は市場に流通する前に加熱殺菌が行われている。このため米国食品医薬品局(FDA)は、牛乳が消費者の健康にリスクをもたらすことも、州間での牛乳供給の安全性に影響を及ぼす懸念も引き続き生じないとしている。また、全米生乳生産者連盟(NMPF)、国際乳製品協会(IDFA)、アメリカ乳製品輸出協会(USDEC)、デイリー・マネージメント・インク(DMI)ら酪農・乳業関係団体も、牛乳・乳製品の安全性について共同声明を発表している。
 米国内では牛へのHPAI感染に関する報道も多くみられるが、政府当局、業界からの安全性に関する情報発信もあり、消費者の購買行動に対する影響は確認されていない。今回の事例を受けて一部の州やメキシコは、(まん)(えん)防止のための制限措置を設けているが、いずれも生体牛の搬入に関するもののみとなっている。

(参考)

 HPAIは鳥類の疾病であり、通常、ヒトに感染することはない。感染した鳥類に触れるなどの濃厚な接触をした場合など、きわめてまれにヒトに感染することがある。近年、欧州や北米をはじめ、世界各国・地域において、飼養されている鶏、七面鳥などの家きんや野鳥でHPAIが多く発生しており、そのような状況で、キツネなどの野生の哺乳類への感染も報告されている。日本ではこれまでヒトのHPAIの発症事例は報告されていないが、米国では2022年、コロラド州でHPAI発生時の家きんの殺処分に携わったヒトから検出された事例が報告されており、米国でヒトから検出された事例としては今回が2例目となる。
【中島 勝紘 令和6年4月12日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部国際調査グループ)
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