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豪クイーンズランド州内で牧草枯死の被害が拡大(豪州)

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 豪州のクイーンズランド(QLD)州政府は4月11日、州内の南部、西部および北部の新たな地域に牧草の枯死が広がっていると発表し、牧畜業者に対して注意喚起を図っている(写真)。QLD州農林水産省(QDAF)の首席農学者であるスチュアート・バック氏は、「牧草の枯死は、一般的に年間平均降雨量が600ミリメートル以上の地域の高収量の播種牧草に発生するが、今年は夏の降雨量が多かった地域にも広がりつつある」と状況を報告した。また、「牧草の枯死が発生した地区の全域に広がっている可能性が高く、牧場の経営者は、牧草の枯死を発見しやすい夏の生育期に、症状の有無をよく観察する必要がある」と注意喚起を図った。
写真:牧草の枯死が広がっている様子(QLD州)(MLAホームページより引用)
写真:牧草の枯死が広がっている様子(QLD州)(MLAホームページより引用)

1 牧草の枯死の原因と対策

 牧草の枯死とは、病害虫や過湿、乾燥など、何らかの影響により早期に枯れてしまう症状を指し、枯死が広範囲にわたると、その土地の生産性が大きく低下する。これまでの研究によると、牧草の枯死にはコナカイガラムシ科の昆虫である「Heliococcus summervillei」が関与しているが、複合的な要因による可能性が高く、引き続き原因物質を特定するための研究が続けられている。近年の研究では、枯死に対する抵抗性品種の選定が進んでおり、もともと枯れにくいマメ科品種に抵抗性の高いイネ科品種を混播した場合、被害を軽減できるという報告も上がっている。

2 業界団体の取り組み

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)の推定によると、2019年の牧草の枯死による損失は20億豪ドル(2012億円:1豪ドル=100.61円(注))を超え、今年も多くの被害が懸念されている。MLAでは、被害地域の業界団体・州政府・研究者と協力し、豪州農林水産省(DAFF)からも助成金を受けながら、牧草の枯死に対する研究開発・普及への投資に対する協調的なアプローチを行っている(図)。これまでの研究の成果により、主な原因が前述のとおりHeliococcus summervilleiであることが判明しており、現在は枯死の二次的な要因について究明し、より適切な解決策を探るプロジェクトが進行している。

(注) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年3月末TTS相場。
MLAの連携体制とプロジェクト一覧
【渡部卓人 令和6年4月19日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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