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EU理事会と欧州議会、ウクライナ産農畜産物貿易措置の延長に合意(EU)

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 EU理事会と欧州議会は2024年4月8日、ウクライナのEU向け輸出品に対する輸入関税と輸入割当の停止措置を25年6月まで延長することで暫定合意した。
 自主貿易措置(ATMs:The autonomous trade measures)と呼ばれるこの措置は、ロシアによるウクライナ侵攻後の22年6月から実施されており、24年6月5日にその期限を迎えることになっていた。

暫定合意の主な内容

 今回の暫定合意の主な内容は以下のとおりである。
・セーフガード対象品目に4品目を追加
 ウクライナからの輸入量増加によりEU域内の需給への影響が大きいと考えられる品目については、セーフガードが適用されることとなっている。2024年1月の欧州委員会の提案では、家きん肉、卵、砂糖について、セーフガードの適用対象とされ(注)、今回の暫定合意では、これら3品目に加えてオーツ麦、トウモロコシ、ひき割りの穀物および蜂蜜の4品目が追加された。
 
(注)海外情報「欧州委員会がウクライナ産農畜産物に対する国境措置の停止措置延長を提案(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003720.html)をご参照ください。
 
・セーフガード基準期間の延長
 輸入量が一定の基準値を超えたかどうかを判断する基準期間について、欧州委員会が提案した2022年から23年までの期間に加え、ロシアによる侵攻前の21年下半期が追加された。これにより、セーフガードの発動水準が下げられた(21年以降の各品目の輸入量の推移については図1から3をご参照ください)。
・セーフガード発動までの期間を当初案の21日から14日に短縮
・穀物、特に小麦の輸入の監視の強化
 一部の加盟国は小麦や大麦についてもセーフガードの対象品目に加えるよう求めていたが、監視の強化にとどまった。
図1
図2
図3
 本件は2024年4月22日から25日の欧州議会の本会議での採択、その後のEU理事会による採択後、同年6月6日から発効される見込みである。

生産者団体による反応

 EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa−Cogeca)など農業・食品等関係の6団体は4月8日にプレスリリースを発出し、ウクライナの生産者との連帯は不可欠であるとしつつも、ATMsによりEUへの輸出量が相当な量となっていることに触れ、ウクライナとの連帯による負担は生産者だけが負うべきものではないとした。
 今回の暫定合意の内容について6団体は、EU域内の生産者や製造事業者への救済措置としては限定的であるとしている。中でも、セーフガードに小麦と大麦が含まれなかったことは、EUの生産者と製造事業者から見て、この措置(ATMs)を今後継続することを困難にさせるものと主張している。
【調査情報部 令和6年4月19日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527