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中国国務院などが今年初の食品安全に関する取締りプロジェクトを公表(中国)

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 中国国務院食品安全委員会、公安部、農業農村部および市場監督管理総局は3月29日、連名で「肉類産品の違法犯罪特化取締りプロジェクトに関する通知」(以下「本通知」という)を公表した。本通知は、「世界消費者権利デー」の翌日に市場監督管理総局が発出を予告していたものであり(注1)、今年初の食品安全に関する取締りプロジェクトの行動目標などを示している。
 (注1)市場監督管理総局の「世界消費者権利デー」への対応については、【海外情報】中国市場監督管理総局、2023年の市場取締り状況などを公表(中国)(令和6年4月2日発)をご参照ください。

本通知発出の背景

 中国国営放送の中央テレビ(CCTV)は、毎年3月15日の「世界消費者権利デー」に関係政府機関と共同で「3.15特別番組」として事業者の違法行為を報じている。テレビ離れが進んだ中国でもこの番組は注目度が高く、食品安全関連では、不適切な豚肉を使った加工食品や不適切な添加剤を使った酒類に関する事例が紹介された。
 このうち、豚肉の事例は「リンパ肉」とも呼ばれる、リンパ節や脂肪瘤(こぶ)、甲状腺を含む豚の首回りの肉について、除去すべきとする中国国家基準の規定に違反してこれらの部位を除去せずに豚肉加工食品の原材料として使用し、自社のコスト削減につなげていたものである。

近年の食品安全に関する取締り

 2023年以降、中国政府の食品安全に関する取締りは強化されている。
 市場の違法行為を取り締まる市場監督管理総局は、「取締りプロジェクト」として毎年取締りの重点分野を定め、通知を公表し、取締りを実施している。食品安全に関するプロジェクトは同局が設置された18年以降、22年までは0件であったが、23年には8月と12月に実施され(注2)、加えて23年12月からは通知の発出主体に食品安全委員会と公安部が追加された。
 取締り強化の背景には、社会不安への対応の強化があると考えられる。特に23年12月の通知は、同年9月に、不確かな衛生管理基準で調理された総菜または半調理品が学校に持ち込まれ、給食として提供されている例が大きな話題となったことを受けたものと推測される。これは、本通知が「3.15特別番組」への国民の反応を受けて発出されたことと同様の対応と考えられる。
 さらに本通知の内容は、23年の2つの通知とは異なり、措置や行動目標について関係政府機関が平時から行っている行政活動の強化を求めるものとなっていた。このことからは、取締りプロジェクトを実施すること、すなわち中国政府が食品安全を重視していることを広く公表すること自体が目的ではないかと推測される。
 (注2)23年8月は「食堂を提供する団体における食品安全問題特化取締りプロジェクト作業方策」、12月は「学内食品安全調査取締り特化プロジェクト実施方案」の通知に基づき取締りが実施された。

肉類産品の違法犯罪特化取締りプロジェクトの概要

本通知は、次の3項目により構成されている。

1 行動目標
 豚肉、牛肉、羊肉、鶏肉およびその他肉類産品を重点対象とし、飼育、と畜、無害化処理、肉類加工の全工程を取り締まり、肉類産品に関する違法行為の根源を深掘りし、違法行為を断固として途絶する。

2 実施する措置
 (1) プロジェクト実施方法の策定、関係政府機関の役割および責任の明確化
 (2) 不適切事案発生リスクの高い地域での取締りの強化
 (3) 飼育過程における監督・検査の強化
 (4) と畜、無害化処理過程における監督・検査の強化
 (5) 食品加工過程における監督・検査の強化

3 実施機関に対する要求
 (1) 組織が一体となって成果を上げること。
 (プロジェクト終了後、食品安全委員会など4部門は地方政府の成果を評価する。突出した成果を上げた団体や個人を表彰し、取組不足の地区や政府部門に対しては改善方策の提出を求めるなど指導を強化する。)
 (2) 食品安全法など関連法規の事業者への啓蒙活動を重視すること。
 (3) 関連法規の運用体制を機能的で健全なものとすること。
 (肉類産品の違法な製造販売が突出して問題となっていることを重視し、公安部、農業農村部、市場監督管理総局などの間で、通報情報やリスク情報の交換交流を行う。共同で法を執行し、違法品を取り締まるなどにより、取締り意識の弱い部分を正確に洗い出し、制度実施における不備や落とし穴を速やかに塞ぐ。)
 (4) 刑事罰に当たる可能性のある事案は速やかに公安部門と連携すること。
【調査情報部 令和6年4月23日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9530