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ドイツ政府、中国向け牛肉輸出の禁止措置解除を発表(EU)

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 中国を訪問していたドイツのショルツ首相は2024年4月16日、中国によるドイツ産牛肉(注1)の輸入禁止措置の解除について中国との共同宣言に署名したと発表した。中国は、2001年にドイツで発生した牛海綿状脳症(BSE)を理由に、同国産の牛肉の輸入を停止していた。
 
(注1)今回輸入が解禁されるのは30カ月齢以下の骨なし牛肉となる。

中国での牛肉需要の高まり

 中国は、近年の所得の向上や食生活の変化などを背景に牛肉需要が高まっており、2013年以降の牛肉輸入量は大幅に増加し(注2)、18年からは、世界最大の牛肉輸入国となっている(図1)。このためEUとの間では、24年に入りスペインなどからの牛肉の輸入解禁を発表するなど、牛肉の輸入先を拡大している。今回のショルツ首相の訪中に合わせてドイツ政府は、中国側に対してドイツ産農畜産物の輸出アクセスの改善を求めていた。
 
(注2)畜産の情報2023年4月号「中国における畜産物消費の変化 〜食肉編〜」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_002681.html)をご参照ください。
図1
図2
 ドイツでは、2001年にBSEの発生が確認されたが、10年以降の発生は確認されておらず、国際獣疫事務局(WOAH)のステータスではBSEリスクを無視できる地域に分類されている。このため日本でも、23年12月から同国産牛肉の輸入が解禁されている。

豚肉の輸入再開に向けた協議を継続

 ショルツ首相は、アフリカ豚熱(ASF)発生の影響により、中国への輸出が停止されている豚肉についても、ASFが発生していない地域からの輸出再開について中国当局と協議を継続することに合意したと述べた(図3)。
図3
 ドイツでは、2020年9月のASF発生により、アジア諸国向けの豚肉輸出が大きく減少している(図4)。特に中国向けは、ASF発生前の19年の輸出量に占める中国向けの割合が51%(EU域内向けを除く。)と過半を占めていた。
図4

業界団体の反応

 今回の発表を受けてドイツの農畜産業界や食品企業で構成するドイツライファイゼン協会(DRV)のミゲンデ最高経営責任者(CEO)は、中国の牛肉需要が高まっていることに加え、牛1頭買いをする買い手であることから、重要な輸出市場であると述べ、今回の牛肉輸出再開の発表を評価した。一方で、今後の両国間の輸出再開に向けた手続きなどを注視する必要があるとした。
 また、ドイツ養豚生産者協会(ISN)は、中国向け豚肉の輸出再開に向けた議論が継続されることを評価し、今後の展開への期待感を表した。
【藤岡 洋太 令和6年4月25日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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